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宮崎県諸塚村/森の恵みを活かした「全国森林公園」のむらづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2004年4月5日
針葉樹と広葉樹のモザイク林相の写真

針葉樹と広葉樹のモザイク林相


宮崎県諸塚村

2475号(2004年4月5日)  諸塚村企画課 三林 正和


諸塚村の概要

諸塚村は宮崎県の北西部、太平洋岸から約50㎞隔てた九州山地の真っ直中にあります。面積は18,759ha で、諸塚山をはじめ標高1,000m級の山々に囲まれ、面積の95%を山林が占めており、平地は宅地・農地等を合わせてもわずか1%に過ぎずません。そのため、標高150mから800mの山間地に88の集落が点在する、林業主体の山村です。

人口は、電力開発に伴うダム工事等が行われた昭和30年代中頃には8,000人を超えていましたが、これらの大型事業の終了や高度経済成長に伴う若者の流出などにより、現在は2,200人にまで減少し、高齢化率も30%を超えるまでに至っています。

諸塚村の産業は、村土の95%を超える森林を生かした林業が中心となりますが、昭和32年に用材、椎茸、畜産、茶を村の四大基幹産業として定め、これらの産業が相互補完しながら生産に励む、複合経営農林業を推進してきました。

森林面積17,821haの83%は私有林で、林家の平均所有面積は20haですが、中規模林家による家族経営の林業が主流となっています。諸塚村の林業の大きな特徴の一つは、車道密度が約60m/haに及ぶ高密度路網であり、林業機械の効率的な利用や間伐材等の搬出コスト削減など生産効率を高めるために大きく貢献しています。また、人工林の3割は諸塚村の主要産業である椎茸の原木となるクヌギ・ナラ等の広葉樹で、針葉樹と広葉樹が適切に配置・植林されており、針葉樹林と広葉樹林がパッチワーク模様に織りなす「モザイク林相」として知られるとともに、災害に強い森づくりがなされています。

村づくりの母胎「自治公民館活動」

諸塚村の産業振興や人づくりの基礎となってきたのが、「社会教育と産業振興の機能を合わせ持った」自治公民館活動です。

その前身は戦前に遡りますが、その時点では集落毎に青年会や壮年会等の組織があり、自学自習の教養団体としての活動を続けながら、産業・文化活動にも力を入れるなど、地域振興の中心的な組織でした。

しかし、戦後の進駐軍の占領施策により戦前の組織は解体され、文部省通達によるところの「公民館の施設を通してのみ行われる公民館活動(社会教育)」の指示に従った活動が試みられましたが、地形上分散された集落等末端への浸透が図れず、予期した効果・実績をみることが出来ませんでした。

そこで、進駐軍や文部省の許可を得るため県等に交渉を依頼するなど紆余曲折を経ながら、各集落にある以前からの組織ではなく、現在の公民館活動において、新たに民主的な団体が組織され社会教育を行うということで、ようやく昭和23年に許可が下りることとなりました。

さっそく、戦前から集落毎にあった集会場としての「公会堂」を改築し、昭和25年までには、村内全域(当時15ヶ所)に公民館が完成しました。そして、これらの公民館を活動の拠点とし、民主的・自主的な性格を持った壮年部会・婦人部会・青年部会等が結成され、さらに、16の公民館やそれぞれの部会が連合協議体を組織し、全村あげて総合的社会教育活動に取り組んできました。

諸塚村の社会教育は、即、自治公民館活動であり、生涯学習の観点からも公民館を総合的な場として、住民総参加の活動を推進してきました。一方で、常に自主性を持ちながらも村当局と連携を図りながら、四大基幹産業の振興に一体となって取り組むなど、村と自治公民館が車の両輪となって施策を推進し、社会教育活動はもとより産業の振興にも大きな役割を果たしてきました。

その結果、生活改善や産業の振興・保健体育等、広範な分野に渡って着々と実績を上げ、「諸塚方式」とも称されて注目されることとなりました。昭和26年に準優良公民館として文部省表彰、昭和63年には農林水産祭表彰行事のむらづくり部門において天皇杯を受賞、さらには、全国乾椎茸品評会で内閣総理大臣賞、朝日森林文化賞の森づくり部門優秀賞の受賞など、むらづくり・産業の振興など幅広い分野で評価をいただき、平成15年度にはこれらの総合的な評価として、過疎地域自立活性化優良事例として総務大臣賞を受賞するに至りました。

「諸塚村文化祭」の1コマ、立岩地区に伝わる「臼太鼓踊り」の公演の写真

「諸塚村文化祭」の1コマ、立岩地区に伝わる「臼太鼓踊り」の公演

「諸塚村公民館大会」(地区公民館の活動状況の発表や講演会を開催)の写真

「諸塚村公民館大会」(地区公民館の活動状況の発表や講演会を開催)

試練が続く農山村の産業・経済

村土の95%を超える森林、急峻な地形など厳しい生産環境の中で、用材、椎茸、畜産、茶の四大基幹産業による複合経営を推進してきましたが、安価な外材や椎茸の輸入等により、主要産業である用材や椎茸の需要低下と価格の低迷が続き、村民の経済を圧迫するようになりました。

用材においては、機械化や道路網整備など生産基盤の強化に努め、間伐材等の有効利用や木材製品の安定供給と質の向上のため木材加工施設の建設・整備を図ってきましたが、生産量は維持できながらも価格は最盛時の1/3以下まで低下しています。また、椎茸においても、昭和50年代には10億円を上げていた生産高も、価格の低迷と生産量の減少により、現在の生産高は3億円を割り込んでいます。

肉用子牛の生産を主とする畜産は、現在のところ子牛の価格が比較的安定しており、自然環境の特性を活かしたお茶も安定した需要を得ていますが、現状の生産基盤や施設の規模では、農山村の経済を潤すほどの主産業となるには厳しい状況です。

多様的で公益的な資源としての森の見直し

いずれにしても、山村諸塚は林業を基軸とした産業の振興が不可欠であり、林業立村を目指して基盤整備の基本となる道づくり、生産性の効率化や生産技術の向上による高品質の物づくり、農林業後継者の育成等の人づくりに努めてきましたが、国際化や価値観の多様化など山村を巻き込む環境の変化の中では、経済的側面のみでの林業の振興では限界が見えてきました。

それを打破していくには、生産のみを目指してきた森林や道路網等の基本的な資源を、都市住民の憩いの場や作業体験の場など多様性のある資源として捉え活用を促進し、未だ利用されていない「豊かな森の恵み」を新たな資源として活かすことなどが考えられます。また、国際的にも評価・認知されてきた「森林の公益性」を、今後どのような形で森づくりに活かしていくかが重要と思われます。

そのため、平成13年度に策定した第4次諸塚村総合長期計画においては、蓄積してきた資源の積極的・多様的な利用に努め、清潔な水・きれいな空気・豊かな林産物など森の恵みを活かし、森の暮らしの歴史・文化・知恵を見直して、多種・多様な「百彩の森づくり」を推進するため、公民館主導による「全村森林公園諸塚」の構想を打ち出し、その実現に取り組むことといたしました。

産直住宅事業の展開

産直住宅事業は、平成9年度から実施しています。当初は、村産材の利用拡大による農林家の経済向上を図ることを主眼においていましたが、ただ単に木材を売ることでは、山村の真の発展と継続性のある森林の管理にはつながらないとして、山村の実状や国産材利用の必要性を理解していただくため、木材産地ツアーも並行して実施してきました。

木材産地ツアーは、木材の主な用途である住宅の建設主や設計・施工に携わる方々を諸塚村にお招きし、森林の伐採現場や木材加工場等の視察・木材セミナーの開催などにより、諸塚産材の品質や生産過程について理解していただく一方で、地域の祭りや行事などに参加いただくなど、地域住民や木材生産者との交流にも努めてきました。さらには、本事業は「建てて終わり」ではなく交流の始まりとして捉え、木材生産者や産直住宅プロジェクトのメンバーが上棟式や竣工式に出向くなどにより、生産地と建築主などとの信頼関係も築かれています。

村産材による安全・健康な産直住宅の写真

村産材による安全・健康な産直住宅

交流事業の推進と公民館活動

地域活性化施策の一つとして交流事業がありますが、観光資源や観光施設に頼るのでなく、自然や村民の素朴な人柄、山村の文化など諸塚村に既にあるものを活かすことから始めました。

その一つとして体験交流事業(諸塚型エコツアー)がありますが、村が買い取った空き家を「森の古民家」として整備し、そこを体験交流事業の拠点施設として、田植えや茶摘みの農林作業・豆腐の加工や釜炒り茶の製造など四季折々の山村生活を体験していただくものです。また、木材産地ツアーと同様に体験作業や地域の祭りなどへの参加を通じて、都市住民と地域住民との交流も図られています。

このことは、都市住民には心身のリフレッシュと山村を理解してもらう機会となり、地域住民には住民自身が地域の自然や文化を見つめ直す契機となり、それらに誇りを感じ、山村の生活や歴史に自信を持つことにつながっています。

また、行政が中心となって行われてきた交流事業ですが、地域や公民館における主体的な取り組みも見られるようになったことから、民間主体の「もろつかエコツーリズム研究会」(通称:まちむら応縁倶楽部)を発足し、この研究会が主体となり地域や公民館と連携して展開するようになりました。 

このことによって、地域や村内に留まった内向きの活動が主であった今までの公民館活動が、交流事業を通じて、外部に向けての取り組み・発信を行うなど、新たな視点に立った公民館活動へと飛躍することが期待されます。

山中の古民家を回収した交流拠点の写真

山中の古民家を回収した交流拠点

山あいの棚田で田植えを体験の写真

山あいの棚田で田植えを体験