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福島県三春町/多様なまちづくりと行政改革で独自施策を展開

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年11月17日
満開の花を纏う滝桜の写真

満開の花を纏う滝桜


福島県三春町

2460号(2003年11月17日)  三春町財政企画総括主幹 橋本 国春


三春町の概要

本町は福島県のほぼ中央、阿武隈山系の西裾に位置し、中核市である郡山市と隣接する旧三春藩秋田氏5万石の小さな城下町である。町域は東西に12.5km、南北に15.7kmの72.76平方kmで、標高230mから510mの緩やかな山並みが続く丘陵地で、気候は内陸性で降雨・降雪とも少ない。町の中央部が市街地、北部・南部が農村地域となっており、町南部には国直轄の三春ダム「さくら湖」と国指定天然記念物で日本三大桜の一つといわれる紅しだれの「三春滝桜」がある。

昭和30年の町村合併で1町6村が合併して現在の三春町となり、人口約2万人、世帯数は約5千7百戸で、従来は農業主体の就業構造であったが、平成12年度の国勢調査では第1次産業約11%、第2次産業約38%、第3次産業51%である。

主なまちづくり事業

主なまちづくり事業は、次のとおりである。①昭和58年度の地域住宅計画(ホープ計画)の指定を受けての住宅の整備、②平成3年度の「うるおい・緑・景観モデル市町村」の指定を受けての市街地の整備、③「地域に開かれたダム」の指定を受けてのダム周辺環境整備事業と自然観察ステーションの整備、④田園生活を創造するための事業としての「田園生活館」や「紙漉の里」の建設、⑤「寝たきりゼロ作戦の推進」、「在宅福祉が主、施設福祉が従」、「地域における助け合い福祉」の基本方針による高齢者住宅併設の「福祉会館」の建設、⑥「三春町学校建築研究会」の発足と教育改革を展望した学校建築の実施、⑦「三春町国際交流協会」の発足と米国ライスレイク市との姉妹都市締結と交流、平成5年度には日米合作による国際交流館「ライスレイクの家」の建設などである。

さくら湖自然観察ステーションの写真

さくら湖自然観察ステーション

田園生活館の写真

田園生活館

三春交流館「まほら」の写真

三春交流館「まほら」

まちづくり協会活動

町民参加を基本に、その合意形成を行いながら「まちづくり」をすすめようと、昭和51年度に全町的な組織として「三春町まちづくり協議会」を設立し、昭和57年度には町内7地区(町村合併以前の旧町村単位)に「まちづくり協会」が設立された。まちづくり協会は、行政区長や地区住民の様々な団体の代議委員が委員となり、それぞれ担当分野ごとに部会を組織し、地域づくりを実践している。また、年1回町執行者等の出席を求め、地域づくりに対する意見交換を行ったり町政の執行状況を聞く「まちづくり懇談会」を開催している。例年11月頃に行われ、町の新年度予算編成に活かされている。

行財政改革大綱

数々のまちづくり事業を推進しながらの本町の行財政改革は、平成10年度に策定した「三春町行財政改革大綱」が出発点である。大綱は「行財政改革の背景」、「基本方針」、「行財政改革の重点事項」で構成されている。行財政改革の重点事項としては、①事務事業の整理・合理化、②組織機構の改革、③定員管理と給与の適正化、④人材の育成・確保、⑤行政サービスの向上、⑥開かれた町政の推進、⑦経費の節減合理化、⑧公有財産の管理運営等をかかげ、各事項ごとに小項目をたてて具体的に取り組んでいる。以下は、その主な取組みについて紹介したい。

事務事業評価管理方式の導入

平成10年度から、各担当者が自らの担当業務を自己評価することを主旨として「事務事業評価管理表」の作成に着手した。現在まで、町独自の事務事業評価管理方式に基づき、毎年200以上の事務事業について管理表を作成することにより、事務事業の評価と改善に努めている。また、財政分析として、平成10年度から普通会計の貸借対照表を作成している。さらに、平成13年度からは決算統計と同様の手法により、各事業単位ごとに経常的収支計算書と投資的収支計算書からなる町独自の「行政収支計算書」を事務事業評価管理表と一体的に作成し、事務事業の財政分析を実施している。

文書ファイリングシステムの導入

従前の町の文書管理は、個人の責任による簿冊管理方式であったため、文書の私物化、文書検索の非効率化、職務環境の悪化などの欠点があった。そこで、これらを解消するため、行財政改革の一環として、平成10年度より文書管理の手法として、ファイリングシステムを全庁的に導入した。その特徴としては、①フォルダーへの文書収納、ガイドを利用した文書分類及びキャビネット利用による文書の共有化、②ファイリング基準表による文書発生から保存・廃棄までの文書の効率的な一貫管理があげられる。これによって、文書検索性の向上、事務の効率化、職務能率の向上、執務環境の向上、町民へのイメージアップなどの効果があったところである。現在も、毎月1回ファイリングの日と定め、職場ごとにファイリング状況の自主点検と各職場の文書管理責任者からなる文書主義委員会を開催するなど、文書主義の徹底に努めている。

月1回の「ファイリングの日」の写真

月1回の「ファイリングの日」

民間委託の推進

民間委託が進んでいる部門は企業局である。本町の企業局は水道事業(水道・簡易水道)、下水道事業等(公共下水道・農業集落排水・個別排水処理)、宅地造成事業の6事業を担当している。従来、水道事業以外は長部局が特別会計で担当していたが、平成14年度から6事業すべてについて地方公営企業法適用とし、「水道事業会計」、「下水道事業等会計」、「宅地造成事業会計」の3つの会計を企業局が管理運営している。事業統合のメリットとしては、①管理業務の集中処理による人員・経費の削減、②技術職員の集中配置による職員の能力開発、③上下水道窓ロ一本化による住民サービスの向上、④水道・下水道、浄化槽の工事の一元的管理、⑤公共下水道、農業集落排水、合併処理浄化槽等の組み合わせにより生活排水を総合的に整備できることなどがあげられる。さらに企業局では、事業の管理運営業務を積極的に民間へ委託している。その主なものは上下水道施設運転管理、会計・料金事務、上下水道施設管理台帳データベースの整備、施設の清掃、施設緑地の管理などである。

業務委託のメリットは、①専門業者のノウハウをそのまま活用できる、②人件費等のコスト削減ができる(町職員数は従来の半分以下)、③経営資源(ひと・もの・かね・情報)確保のリスクが回避できることなどがあげられる。

組織機構の改革

執行機関を強化するとともに、その役割と位置付けを明確にして集団型の実務者機関の組織とするため、平成13年度から従来の上位下達式の課・係のピラミッド型構造を廃止し、長部局を3つの部門に括り、個人担当・個人責任制のフラット構造に改め、より機動的な組織とした。これに伴い課長、課長補佐、係長といった「職名」は廃止し、参事、総括主幹、主幹、主任主査、主査、主事といった「職能名」のみを残した。なお、本町では平成12年度から助役が収入役の事務を兼掌している。

政策協議機関の設置

地方分権により、地方自治体には高度の専門性などが必要とされていることから、政策形成過程の透明性を図り政策立案と決定責任を明確にするために、長の諮問機関であった既存の町振興対策審議会を活用して、町民代表の委員、学識経験者などによる公開の会議を開催し、政策・討論協議を行っている。この審議会は「政策課題の提起」、「政策課題の協議」、「報告」などという形で議題を内容によって分けて毎月開催している。このことによって職員員には政策課題に対応する情報収集、事務整理能力や方針、計画をまとめあげたり説明する能力が一層求められ、職員の政策形成能力の向上も図られている。

今後の課題

本町は、現在国が推進している市町村合併問題について、7地区まちづくり協会を単位とする「地区住民」、「町議会」、「町執行者」が一体となり昨年度協議検討を行った。その結果、当面合併しないで三春町の歴史、文化と自然を活かし、まちづくりを継続して推進することに決定した。しかし、人口2万人規模の本町が特色ある独自のまちづくりを継続するためには、従来進めてきた数々の行財政改革を検証しつつ、「事務事業評価管理」をより向上させ行政の効率化を図ることが不可欠といえる。そのためには、職員一人ひとりが事務事業評価管理の目的を理解し、分析能力や政策形成能力を身に付け、さらには住民にきちんと説明し、理解され信頼されることが大切である。事務事業評価管理システムが行財政改革の特効薬ではないがシステムを構築し、定着させ行財政改革を図っていく必要があると考える。