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長野県野沢温泉村/野沢菜とユーモアを使った心のふれあう地域づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年9月8日更新
野沢菜料理の写真

野沢菜料理


長野県野沢温泉村

2452号(2003年9月8日)  野沢温泉村長 高橋 善造


野沢温泉村の概要

野沢温泉村は、長野県の北部に位置し、名前のとおり豊富な温泉に恵まれ、冬季には県内外から多くのスキーヤーが訪れる観光の村です。人口は約4,600人で、総面積は57.95平方km、東西9.1㎞、南北11.5㎞、周囲38.2㎞となっており、村土は約50%を山林が占め、景観の良さなどから上信越高原国立公園に指定されており、それらの一部を含む約300ヘクタールが現在スキー場区域となっています。

地形は、東に三国山脈の傍系としてそびえる毛無山を頂点として、西に流れる千曲川に傾斜し、村内に流れる一級河川の赤滝川、湯沢川、池の沢川はいずれも毛無山に源を発して千曲川に注いでいます。海抜高度差は、村北部の明石(300m)から、毛無山(1,650m)に及び山谷形で起伏が多い地形となっています。気候は、アジア大陸からの影響を受ける典型的な日本海側気候で、年平均気温は10.8℃、年間降水量は1,773㎜、最大積雪量は208㎝(平成14年)と、全国でも屈指の豪雪地帯となっています。本村が「湯山村」として歴史に現れてくるのは、鎌倉時代中期の文永9年(1272)が最初であり、江戸時代初期にはすでに24軒もの宿屋があったといわれ、明治3~5年には24,863人の湯治客が訪れていたと記録に記されています。

このように、古くから温泉地として栄えていた本村は、その後、明治45年に当時中学生であった村出身者が初めてスキーを滑り、大正12年には野沢温泉スキー倶楽部が発足し、スキー場の開発とスキーヤーの誘致、宣伝に努力するなど温泉とスキーを中心としたむらづくりが始まりました。

また、鉄道の開通等村までのアクセスの改善を背景に、数々のスキー競技会の開催などにより、野沢温泉スキー場は着実に発展を遂げてきました。昭和38年にはスキー場が施設を含めて全て村営となり、住民と行政が一体となった観光地開発が進み、一層の充実が図られてきました。最近では、平成10年に長野オリンピックのバイアスロン会場として選ばれ、同時にスキー複合の河野孝典選手を始め、14名のオリンピック選手を輩出し、世界的に野沢温泉の名前は広がりました。しかし、近年では景気の低迷やスキー人口の減少等により、訪れる観光客が減少したため、スキー客の誘致が課題となっております。

蕪四季會社の設立

野沢温泉村は、全国的に有名な「野沢菜」の発祥地であります。その歴史は古く、今から約250年前、野沢温泉の名刹健命寺の住職が京都に遊学した際に、天王寺蕪の種を持ち帰り栽培したところ、野沢温泉の気候や風土により、葉柄や茎丈の大きな「蕪菜」に成長し、野沢菜が生まれたと言われています。野沢菜には、他の野菜と違い、漬物にしてもその栄養素がほとんど減少しないという特徴があります。ガン予防に効果があるというビタミンAは漬物にすると逆に増加をします。野沢菜漬はビタミン豊富で、ガン予防にも優れた漬物と言えます。

この特産品「野沢菜」を使って全国の漬物好きの人達との交流を図り、村の魅力作りにつなげようと設立されたのが「のざわな蕪四季會社(かぶしきかいしゃ)」です。平成2年に観光協会役員、宿泊関係者、農家等によりイベント内容が検討され、単なるオーナー制度に終わらず洒落とユーモアを生かした特色あるイベント作りを目標に設立されました。野沢菜の蕪をもじって「蕪四季會社」とし、全国から蕪主を募集したところ、初年度に約380名もの蕪主が誕生いたしました。その後各方面の新聞などで紹介され、また口コミでも広がって、蕪主は延べ5,000人を超え、全国の皆様から好評をいただいております。

洒落にこだわったイベント展開

「のざわな蕪四季會社」は、観光協会が主催しており、今年で14周年を迎えました。

蕪主になれるのは、野沢温泉と野沢菜が好きな村民以外の方で、出資金は一口5,000円からとなっています。蕪主になると、蕪券がもらえ、年2回本場野沢温泉で漬けこまれた新鮮な野沢菜が自宅まで送られてきます。しかし、これだけでは終わらず、その他に洒落とユーモアにこだわったいくつもの特典を設けています。株式市場ならぬ「蕪四季思情」と題したニュースレターを発行し、野沢菜の美味しい食べ方や四季折々の野沢温泉の情報、各種イベントのお知らせなどをお届けしております。

配当ももちろんありますが、ここでも「とう」の読みにひっかけて、「配陶」の時は野沢菜の蕪をイメージした絵皿、「配湯」の時は温泉肌水、「配燈」の時はミニ提灯といった毎年バラエティに富んだ配とうを蕪主の皆様にお送りしております。すでに10を超える配とうが誕生しており、役員は毎年知恵を絞りながら新しい配とうを考案しております。

また、蕪四季會社専用の野沢菜農場があり、耕起・種蒔き・間引き・栽培管理・収穫等農場運営は、育苗協会に委託しており地元農家が一体となって行っております。9月に行われる一番間引きで収穫された野沢菜は特に美味しいと言われており、即日温泉の源泉である麻釜(おがま)で茹でられ、配とうと一緒に蕪主の皆様にお送りしております。

野沢菜をイメージした「配陶」の写真

野沢菜をイメージした「配陶」

麻釜の写真

麻釜

交流の場・蕪主総会

蕪主総会は毎年11月1日に開催し、全国の蕪主に本村へお越しいただき、農場で野沢菜の収穫体験をしていただきます。漬物でしか知らなかった参加者も、生えている野沢菜を初めて見る方も多く、その大きさや軟らかさに驚きます。また、自ら収穫した野沢菜は持ち帰ることができ、自宅で野沢菜漬けに挑戦される方もいます。今まで食べるだけだった野沢菜も自ら取ればその味はひとしお。野沢菜に対する思いも深まります。

収穫体験の後は、蕪主と村関係者が参加して交流会を行います。当日の料理は、全て地元の食材を使った地域住民の手作りで、当村伝統の家庭料理や野沢菜を使ったアイデア料理など数々のメニューがテーブルを飾ります。これら料理を一緒に食べながら、地元住民と全国の蕪主がお互いに交流を深めます。蕪主には温かなふれあいと安らかなくつろぎを体験してもらい、野沢温泉村を「心のふるさと」として感じられるような機会にしてほしいと考えております。ただ商品を発送するだけの地場産物の宅配制度ではなく、本イベントの大きな目的の一つである全国の蕪主と心の通じあうふれあいを実現する場がこの蕪主総会となります。また、10年以上にわたり安定して毎年300名を超える参加者を確保してきた大きな要因であると考えます。毎年全国から150名を超える蕪主とその同伴者が総会に参加して、本村へ滞在しており、観光産業に及ぼす経済効果は大きいものがあります。

今回、栄誉ある地域づくり総務大臣表彰(活力のあるまちづくり部門)を受賞できたことは、観光と農業が一体となって組織された地元スタッフによるイベント実施により、地域振興、観光産業・地場産業の活性化が成されたことが認められたものであり、観光協会役員を始め地元スタッフが心から地域の活性化を願い、知恵を絞り、労力を惜しまず努力してきた成果であると考えます。

この喜びを皆で分かちあうため、本年5月には祝賀会である臨時蕪主総会を開催しました。当日は蕪主と村関係者を合わせ約80人が出席。野沢菜や山菜などの郷土料理を食べながら歓談し、改めて本イベントの成功を祝い、更なる発展を誓いました。

野沢菜の収穫体験の写真

野沢菜の収穫体験

交流の場「蕪主総会」の様子の写真

交流の場「蕪主総会」の様子

効果と展望

現在、国では三位一体改革が論議され、地方交付税の削減が進行しており、本村においても安定した財政構造の確立が急務となっております。また、先行きの見えない景気低迷が続いている今、観光業を基幹産業とする本村にとって、村の活性化が大きな課題となっております。

このような村の現況の中、地方分権一括法が施行され、本格的な地方分権時代に突入しており、住民が主役となった地域づくりがますます重要となっております。本村には「野沢組」という100年以上の歴史を持つ伝統ある地域共同体が存在します。温泉の源泉や共有林の管理、国の重要無形民族文化財「道祖神まつり」の運営などを行っており、本村は住民自治の先進地と言えます。

今後は、住民と行政が手を携えて創り上げて行く豊かな地域づくりの更なる推進を目指していきたいと考えております。この「のざわな蕪四季會社」は、古くから住民の手作りによる「むらづくり」を行ってきた本村の伝統を継承するものであり、村の活性化を成す重要なイベントとなっております。今までとは違ったソフト面での活性化を目的に村民により組織され、役員自ら英知と創意と労力を駆使して活動しており、野沢菜を通して、訪れる人達が参加・体験型の観光と農業を結びつけた先進的な方法により、観光産業、地域産業の活性化に大きく寄与しております。

展望としましては、青年層から高齢層まで幅広い世代に参加いただいている本イベントですが、今後は子どもにも喜ばれる野沢菜料理を楽しんでいただき、多くの子どもたちにイベントへ参加してもらい、もっと野沢菜に親しんでもらいたいと思っております。

今後も参加者から長く愛されるよう新たなアイディアを盛り込みながら、本イベントの更なる発展に努めていき、野沢菜を通じた全国の蕪主との交流を進め、また観光と農業が手を取り合って地元住民の野沢菜に対する意識の高揚を図り、本村から全国への情報発信を進めていきたいと考えております。

全国の皆様、あなたも野沢菜の蕪主になってみませんか。