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シリーズ田園回帰⑧世界の田園回帰 11カ国の動向と日本の展望

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年6月2日

シリーズ田園回帰⑧  
世界の田園回帰 11カ国の動向と日本の展望

農文協刊 大森 彌・小田切 徳美・藤山 浩 編著
定価(2,200円+税)

田園回帰

 『シリーズ田園回帰』全8巻が完結した。タイトルは、「世界の田園回帰」。グローバルな視点で田園回帰を捉え、普遍性や可能性を展望する最終巻にふさわしい構成になっている。第1部の「日本の田園回帰」では大森彌氏と小田切徳美氏が、それぞれ総括、展望する。大森氏は「田園回帰」の意味を、共生思想と地域の自治という視点から紐解く。2000年初頭の骨太方針に記された「都市との共生・対流」、地域に劇的な変化をもたらした市町村合併、そして最近の地方創生など、政府の政策対応にみる都市優位の発想とそれへの反発が、ジグザグ状に進行してきた経緯を、自治体や地域、都市に暮らす人々の動きとともに明らかにする。小田切氏は、田園回帰の局面を、①人口移動論、②地域づくり論、③都市農村関係論の3つに整理した上で、シリーズ各巻の位置付けを、これら3局面に投影させ提示する。これからシリーズを手に取る人にとっては最適なガイダンスとして、既読者にとってもシリーズを貫く思想の新発見につながるであろう。  

 第2部は、11カ国の田園回帰の最新動向を紹介する。各国の事情を読み進めていると、田園回帰志向や抱える課題の共通性が浮かび上がる。フランス、ドイツ、英国、イタリア、オーストリア、スウェーデン、ロシア、キューバ、韓国などを取り上げているが、およそ触れる機会がなさそうな国々も登場するなど資料的価値も高い。

 第3部(終章)は、「田園回帰の深化」をテーマに第1巻の著者、藤山浩氏が締めくくる。今なお反響を続けている第1巻のアップデートや田園回帰の最新動向と長続きする文明と地域社会のあり方など示唆に富む提案が詰まっている。

 最後、「次の世代の記憶に残り得る志を示すことが、いまの時代、いまの地域に一番求められているのではないだろうか」として筆を置く。田園回帰はより深く進行するであろう。