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地域の力―食・農・まちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年5月18日

地域の力―食・農・まちづくり

大江正章 著
岩波新書 定価735円

 総務省が「地域力の創造」を提唱し、中小企業庁は「地域力連携拠点事業」を採択するなど、地域力への注目が高まっている。それらに先駆けて2008年2月に出版された本書は、格差と疲弊が広がるなかで、市民と自治体行政がともに知恵を出し合い、魅力を発信している地域に着目。丹念な取材によって、人びとが元気になり、人と自然、人と人との関係性の豊かさが息づき、外部から人が多く訪れるようになるまでをレポートしている。

 著者は、これらの地域には四つの共通点があるという。それは、地元資源を活かした中小規模の仕事の発展と雇用の増加、リーダーの存在、Iターン者・Uターン者の多さ、自給的部門の健在である。また、取り上げられているのは、地域おこしの世界でよく知られたところばかりではない。それゆえ逆に、普通の自治体にも工夫と努力と根気さえあれば新たな可能性が開かれていることがよくわかる。なかでも、いまや地産地消のモデルとなった愛媛県今治市や有機農業に先駆的に取り組む北海道からは、自治体職員の仕事の意義が明らかにされ、共感する。「葉っぱビジネス」で有名な徳島県上勝町に対する「ほんまの福祉」という指摘も斬新だ。自治体職員必読の書である。