小田切 徳美・橋口 卓也 著
農山漁村文化協会・刊 1,700円+税
中山間地域の農業と暮らしを支え、地域政策の要ともいえる「中山間地域等直接支払制度」。本書はこの制度設計に関わった当事者による、制度理解の最良の教科書であるとともに、政策迷走の実態検証という異例の構成になっている。
前半は、制度創設から曲折を経て発展してきた系譜を、データや事例を用いながら丁寧な分析でひも解く。とりわけ政策実務担当者にとって、極めて有益な内容が満載されている。後半は、第5期対策で講じられた「集落機能強化加算」の廃止をめぐる「迷走」と未来に向けた提言。いったい何が起きたのか、大手メディアがほとんど報じなかった実態が明らかになる。全国町村会も令和6年10月「期待を裏切る」、「構想力の欠如」などを指摘する意見書を出した。ぜひとも手に取ってその内容を確かめてほしい。現場に影響を及ぼす政策ほど、批判や検証を経て磨かれるべきである。中山間直払い制度は、二人の著者が所属した第三者委員会という、政策効果が発揮される装置を有した、国の政策の中でも出色の仕組みを内包している。本書を手にし、この制度が四半世紀以上続いている意義を再考してみてほしい。ある首長は、「この制度があるから地域は持っている」と語った。本書を読むとその言葉の重みが伝わってくる。