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島根県唯一の村からのチャレンジ

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年3月16日

島根県島根県知夫村長 平木 伴佳

知夫村は、島根半島の北方約40~80kmに位置する島前(西ノ島・中ノ島・知夫里島)と島後(竹島含む)からなる隠岐諸島の最南端に位置する知夫里島にある一島一村の島根県内唯一の村です。

知夫里島の最高峰「赤禿山」の山頂からは隠岐諸島全島や島根半島、中国地方の最高峰「大山」等を望むことができます。また、赤禿山を中心とした放牧場では、頂上付近から水が湧き出すことを利用して、周年放牧が行われており、そこで牛馬が草を食む姿は、長閑な光景そのものです。

古くは、本土から隠岐へ渡島する人が最初に上陸する島として、また、帆船時代には北前船の寄港地として、海上交通の要所とされてきました。

面積約13・7㎢の小さな島に2、000人を超える島民が生活していた時代もありましたが、昭和40年代に入ってから都市部への人口流出が進み、現在では人口613人、高齢化率46・8%という過疎・高齢化・少子化が進む村となりました。

平成の市町村合併の際、当村を含む島前地区は単独町村の道を選択し、現在に至っておりますが、この選択が正しいものだったのかは判りません。しかしながら、知夫村民のうち大多数がこの選択に納得している現状は、私にとって大きな支えであるとともに、責務の重大さを感じるところです。

現在、知夫村が抱える多くの課題を解決する上で大きな壁となっているのが「人口減少問題」です。産業・福祉・教育等が抱える課題の解決を図る上でも、この問題を原因とする人材不足が立ちはだかっていることを昨年の就任以降、改めて痛感致しました。
そこで先ず、取り組んだのが、「地域おこし協力隊制度」を活用した産業・観光・介護・教育等の各分野で必要とされる人材の公募です。その結果、僅かずつですが、お問合わせや実際に面接に来られる方が増えてきました。

今年4月からは、小学5年生から中学3年生までを対象とした「島留学」をスタートしました。村唯一の小中学校(小中一貫校)の存続が危ぶまれる中、「600人の家族と暮らす島留学」をコンセプトに島の恵まれた教育環境を前面に出し、全国に向け募集したところ、5名の留学生を受け入れることができました。刺激の少ない島内の子供達と留学生が学校生活に止まらず様々な場面で仲良く切磋琢磨している光景は微笑ましい限りです。また、留学生をお世話するハウスマスター(寮母)も併せて募集し確保することができたことは一つの成果であったと思います。

他にも、地域おこし協力隊員の中には、特産品開発を目指す者、観光資源の開発や活用を模索する者、「民泊の運営」を志す者も現れています。今後の新たな展開に期待するところです。

昨年12月には島の玄関口「来居港」に本土と隠岐を結ぶ隠岐汽船の新ターミナルが竣工致しました。今迄、個人経営であった取扱店(乗船券取扱い等)を第3セクターである知夫里島開発(株)が引き継いだのを契機に、この新ターミナルを新たな雇用の場と位置づけ、島の観光や世界ユネスコ隠岐ジオパーク等の情報を発信する拠点として機能を取り入れた施設を整備し、運営に携わってもらうため複数の社員を雇用することができました。

今後この施設は、島民や観光客の交流の場としても活用する方針です。

福祉の分野では、地域おこし協力隊員等として移住してきた保健師や管理栄養士が、今年度役場職員採用試験を受験し、現在は村の職員として勤務しているほか、「訪問介護ステーション」設置に向け、介護関係の有資格者確保等の準備を進めているところです。
基幹産業である「畜産業」の分野では、牧畑を活用した低コスト生産であることに加え、指導者や助成制度を用意していることを明記し公募した結果、新規就農者を呼び込むことができました。水産業につきましても、岩ガキ生産に取り組む新規就業者が現れ精力的に頑張っています。

過疎・高齢化・少子化が進む小さな村からのチャレンジが実を結ぶよう、より一層精進してまいります。