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町民と行政の協働による「まちづくり」への挑戦

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年8月7日

秋田県八郎潟町長 畠山 菊夫

 

大きな社会問題となっている人口減少の中で、「如何に町民の生活を守るか」が問われています。八郎潟町も例に違わず、前回、「第5次八郎潟町基本構想」の中で多くの有識者・町民、それに行政が全力を傾注して「町民との協働によるまちづくり」を策定しました。

しかしながら、それだけの全能を投入してもなお、人口問題の状況は改善の兆しが見えておりません。これは、想定を上回る社会環境の悪化もさることながら、「町民との協働」という仕組みづくりが大変難しいことも大きな要因と考えています。

こうした背景を踏まえ、昨年、再度、町民との協働を全面に掲げた「住みたい町・住み続けたい町」を目指し、「シニア活躍支援組織設立準備室」を庁舎内に立ち上げて、専任する町民を1年間臨時職員として雇用し、行政職員がこれを支援する組織としました。

「シニア活躍支援組織」は、現役を退いたシニアの経験・知識・人脈と時間を、まちづくりの人的資源として活かそうという考えですが、これにはもう一つのポイントがあります。それは、「若者の夢・女性の感性を取り入れ、高齢者が実践する」というもので、昨年7月に「夢を語り合おう・八郎潟」という全町民を対象としたイベントからスタートいたしました。「夢」は、従来の常識にとらわれない「改革を目指す」との思いを意味します。

そして、その参加者の中から、これまでボランティアやまちづくりに活躍してきた方々など、18名からなる「夢の実現に取り組む設立準備委員会」が立ち上がり、本年2月、正会員64名、賛助会員10名からなる、「NPO法人Hachi LAB(はちらぼ)」の設立総会にたどり着きました。この中には、若者4名、女性4名が参画し、さらにその若者や女性の仲間も事案毎に参加することで、この運動は大きな広がりを見せてまいりました。

初年度の事業として、商店街の中で空き店舗が目立つ一角に、集客装置となる町民ニーズの高い「生鮮食料品店」、町のもったいない資源をお金に換える「フリーマーケット」、町の料理自慢が高齢者や子育て・共働きで忙しい家庭のためなどに総菜等を提供する「食品加工工場」、更には、ボランティア団体等が共に活用できる「貸事務所」「会議室」、そして町民の「コミュニティサロン」と懸案であったまちなかの「公衆トイレ」を開設し、商店街全体の再生を図る皮切りとしての事業を始めます。

隣接する町には大型スーパーやショッピングモールが立地しておりますが、近年では高齢化時代を受けて、これら商業施設の利用客へのサービス等対応には目を見張るものさえあります。このような集客力を持つ商業施設にも依存せざるを得ない我が町の経済環境の中で、厳しい経営を余儀なくされている商店街の状況を知る識者の多くからは、町の新たな事業展開を危ぶむ声も多数聞かれます。しかしながら、将来人口が減少し、高齢者が町の大多数を占める時代が来ると言っても、それは未だ先の話。今からその対策に着手しておかなければ、手遅れになってしまいます。

加えて、商店街の再生には別の目的もあります。それは、将来の高齢者を支える時代に備えるため、「地域コミュニティを活発にする」必要があるということです。商店街には古くからの地域の拠り所としての機能を発揮してきた歴史的な役割があることからも、このプロジェクトはどうしても成功させなければなりません。その成功のポイントは、商店主の頑張りはもちろん、全町民の理解と協力にかかっています。

人口6千人、秋田県で最も狭い町、かつ人口密度の最も高い町、県都秋田市との距離は約30㎞で、JR線が1日片道28 本、国道と秋田自動車道が並走するこの町にとって、県都のベッドタウン機能を強化しつつ、人口減少に歯止めをかけるとの思いを込めた、我が八郎潟町の協働による「まちづくり」への挑戦が始まりました。