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一燈を提げて暗夜を行く

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年6月5日

徳島県那賀町長 坂口 博文

 

中学時代に恩師にある日「一燈を提げて暗夜を行く」何事にも信念を持って当たれ…と言われたことを今でも思い出します。全文は「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め」これは言志四緑の一節であり「暗い夜道を一つの提灯を提げて行けばどんなに暗くても心配する必要は無い。ただその一つの灯火を信頼して進めば良いの意である」灯火=自分の信念・志であり、人の生き方を説いた一節です。

那賀町が合併すべきかどうか議論がされ始めたころ、上流(3町村)・下流(2町)で合併すべきか、上下流併せて5町村で合併すべきか、激しく議論され、協議会の一時解散をも経験しながら最終的に5町村合併の現那賀町が平成17年3月に誕生しました。当時は財政状況も厳しく全国ワースト10に入る状況の上に、公金横領事件が発覚するなど混乱状態が続いた中で、丹生谷地域という独特の絆があった故のこともあると思いますが、町民の皆様の理解と協力により、財政基盤も平成27年末基金残高127億4千万円、実質公債費比率6.6%と好転しました。

町は694.98㎢と広大な面積で山林が95%を占める林業地帯であり、又、農地は標高50mから550mの間にあり小規模農業ながら適地適作を活かし、収益性の高い作物を生産しています。特に木頭ゆず、切り花、スダチが上位を占め海外展開も行っています。

本庁舎のある最下流には大塚製薬㈱及び大塚テクノ㈱の工場があり従業員約380人が雇用されています。現在、隣接する阿南市まで高規格道路が完成間近であり、両社とも、それに併せて規模拡大策を検討されているところでもあります。又、最上流の木頭地区には、いち早く㈱メディアドゥのサテライトオフィスの設立をしていただいた藤田社長による、木頭ゆずを中心とした新会社KITO YUZU㈱を設立し、上流地域に国内外から人が集まる仕掛けとしてオープンカフェ・企業研修施設・廃校小学校にIT企業の誘致、空き家を含めた安心して暮らせる住宅整備、温泉ホテル等の構想を計画していただいており、町としても最善の支援をしていきたいと思っています。

元々林業で栄えた町ですが、木材価格の低迷により林業従事者が激減している状況にあり、再生に向けて素材生産20万㎥、林業従事者250人を目標数値に林業マスタープランを掲げて推進しており、林業関連産業の核となる林業ビジネスセンターを本年4月に開所しました。今後も引き続き情報の一元化による効率的且つ安定的な森林経営をサポートし、木材流通コスト削減を含めた広域的な視野から経営改善を図り、林業従事者の確保と雇用の場の拡大を図って参ります。又、唯一の高校である那賀高校に森林クリエイト科が設置されたことにより人材の育成に確実に繋げるべく、行政として学校運営に積極的に参画し、施設整備は勿論、教育環境の整備に最善を尽くしていきます。

人口減少抑制策としての定住・移住人口の確保には住宅の整備は欠かせません。今年度、宅地造成を進め、順次家賃で償還可能な戸建住宅等約55戸・集合住宅2棟の建設を進めます。子育て環境においても保育料・授業料の減額、医療費18歳まで無料化を実施してきましたが、今後、高校生の寮費軽減、企業社員の家賃軽減には、住所移転を条件に検討し、定住化を図ります。

こうした中で、安定して働き続ける雇用の場の創出を基本に、若い世代が定住・結婚・出産・子育てに希望が持てる町、新しい人の流れをつくり時代に合ったまちづくりをすすめることにより人口減少の抑制を図っていきます。「ドローンが飛ぶ町」那賀町は徳島県の特区を受け現在、国の特区を申請中であり、すばらしい景観を空撮し全国に発信していき、那賀町が「住む人来る人に 魅力いっぱいの町」、本当に「那賀は なかなか いいいなか」を実感していただきたいと思っています。