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たかが百年 されど百年

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年12月21日

北海道置戸町長 井上 久男

 

北海道の東部・オホーツク管内の南西部に位置する置戸町は今年、節目の百周年を迎えている。管内の中心市である北見市から大正4年に分村したのが始まりとしている。先月には、 300名の方々にご出席をいただき、記念式典を挙行し式辞を述べた。全国の町村からすると歴史の浅さに驚きを感ずる首長もいらっしゃるのではないかと思う。

今68歳の私が、これまでの町の百年を語るには、私自身がその知識を十分持ち合わせているとも思えない。大先輩の話や記録写真などをみても、未開の大原生林の開墾が如何に大変なものであったか、 まさに「筆舌に尽くしがたい」様が伺われる。私たちは、その時代をその時々を一生懸命生きてきた人たちの頑張りを真摯に伝えていく責任があるように思う。

私は、町の広報誌に「町長日誌」を6年近く掲載した。月に一回ではあったが、時には出張先のホテルからファックスで原稿を送ることもあった。町長に就任して15年、この間町民や私にとってもいろいろな、 そして重要な出来事があったように思う。すでに10年も前の日誌ではあるが、当時の私の思いを書いたものとして2つ掲載させていただいた。

2004年8月8日掲載
「大人が生き生きとしなければ」

我が国は、世界で最も少子化の進んだ国になりました。昨年の出生率は1.29と過去最低を記録し、人口を維持するのに必要な水準は2.08と言われていますので、この状態が今後も続きますと、 今世紀末には日本の人口は半減すると予測されています。

子どもを何人持つかは個人の選択の問題だと言う考え方もありますが、わたしたちが現在経験しているこの状況は、個人の選択を超えた国家的な危機と考えるべきだといえます。

少子化の急速な進行は、社会や経済、地域の活力低下を生み、社会基盤を揺るがす事態をもたらします。政府は今年6月、こうした少子化の流れを変えるための取組みを始めたわけですが、 すぐに結果がでるというものではありません。

少子化対策としての子育て支援が実を結ぶには、今の大人が生き生きとした姿を若者に見せることも大切なことだと思います。

置戸の人口も10年後には現在の8割と予測していますが、子どもの減少率はそれをはるかに上回ることが予想されます。町として大きな課題ですが、若者が自立してたくましく育つことのできる、 そんな町を目指したいものです。

2005年4月11日掲載
「大きな心残りではあるが・・・」

ふるさと銀河線の廃止を決定した3月27日は、つらく厳しく、気持ちがめいる一日でした。

20年前の昭和60年、当時の池北線をはじめ道内の長大4線を「バスに転換しても支障がない」として、廃止路線に選定されたとき、 沿線では何としても「国鉄池北線を廃止してはならない」と大きな存続運動が巻き起こりました。私も町長という今の立場とは違いましたが、存続を願う住民大会の成功を目指して、 毎晩60にも及ぶ自治会長の家を訪問したことが、ついこの前のことのように思い出されます。

昭和63年に存続が決まり、翌年の平成元年、第三セクター鉄道「ふるさと銀河線」として開業された時は、ほかに比べようもないほどの大きな喜びでした。

網走と十勝を結ぶこの鉄路は、北海道の開拓や沿線の市・町の発展に大きな役割を担ってきましたが、開通から百年にも及ぶ鉄道の歴史の幕引きを、結果として多数決で決めなければならなかったことの無念さが残ります。 しかし、来年4月からのバス運行や鉄路撤去後の整備をどのように考えていくか、いま、町としても大きな課題を抱えます。この課題解決のためにも町民皆さんのご理解とご協力を願っています。

今日、地方創生をはじめ人口減少の問題や少子高齢社会への対応など多くの課題を抱えている。10年前と今とでは、社会環境も大きく変わったが、地方鉄道とともに町が消えていくことがないよう、この先150年、 200年と未来永劫輝き続けることを町民とともに願い、誓った式典であったように思う。