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水の豊かな御蔵島の謎と伝説

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年4月20日

東京都御蔵島村長 広瀬 久雄

 

御蔵島は、東京から南方200㎞三宅島南下18㎞に位置する火山島で、面積20.58k㎡のほぼ円形をなし、周囲40mから最高480mの断崖絶壁に囲まれた厳しい自然環境の地形をした島です。

御蔵島の歴史は古く、6000年から7000年以前の縄文末期まで人の居住が証明されているが、その後の人が住んでいた史料等は明らかではない。中世に関わりのある史料や伝説があるところから、 室町、安土桃山時代より人が住んだと云われている。標高851mの御山を頂くこの島は、全島原生林におおわれ多量の水をその地下にとどめている。これら湧出する水は豊かな湲流を作り、 枯れることなく流れ、他の伊豆諸島の水不足とは対照的な島であります。

昔、神津島に伊豆諸島の神々が集まり、神津島の天上山にある大池の水を七つの島に分けようという相談があった。ところが、その分配の方法でなかなか話し合いが付かない。 このままではまとまらないので、一度島に帰り明朝集合し、その到着順に水を汲ませることに決まった。夜が明けるのを待ちかねて神々が神津島にやってきた。一番が御蔵。続いて新島、 八丈次いで三宅、大島そして遅れてきたのは利島の神で到着順に水が配られた。最後の利島はほとんど残っていなかった。自分の朝寝坊で遅刻したことを忘れ、利島の神は怒り、 草履のまま池の中を暴れまわった。その時、あちらこちらに湧き水が飛び散ったので、神津島は各所で水が湧き、御蔵は一番多く水をもらったので、飲み水に恵まれていると伝えられています。

昭和35年頃、植物学者の高橋基生先生は屋久島で植生調査の証明が進まない実験を、御蔵島の中学1年生から3年生協力のもとにすすめ、南の島で高山植物も生える特異な自然現象を調査しました。 黒潮と強い風、急峻な山岳地形。海抜851mのこの島は海蝕崖による上昇気流により山は常に雲がかかり、「樹雨」となって地下に蓄えている。御蔵島には1年に400日の雨が降るとのことわざがあるとされます。

40年から50年前までは中学を卒業し、島を出る時には島には戻ってくるなといわれるくらいの現実もあった。自然条件が厳しい島には港もなく、月2回の定期船は天候により数か月に一度の時もありました。 港湾整備の途上にある現在も、昨年は11日間連続で船が欠航したこともありました。今日においても交通アクセスは依然厳しい状況が続いていますが、伊豆諸島の神々は御蔵においしい水、 特異な自然環境を与えてくれた。特筆される固有の残されたこの環境を利用し、御蔵島に合った自然保護とエコツーリズムを促進しながら、人と自然が共生すると共に、住みよい、 多くの人々に親しまれる島を目指し、引き続き国、東京都には安定した就航率の向上を実現する港湾施設整備の早期の改善を図るよう要望を進めてまいります。 又、東京諸島は各々厳しい財政事情の中で個々の島々の特性を生かした島づくりに奮闘中です。そして、5年後には東京オリンピック、パラリンピックが開催され新国立競技場に聖火が灯されます。 東京都全ての町村にも聖火が巡り、互いの絆を深めオリンピックの精神、開催する意義、住民一人一人の心に残るオリンピックが実現できるよう希望します。