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民俗学ともちむぎ麺のまち

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年1月19日

兵庫県福崎町長 嶋田 正義

 

「民俗学柳田國男ともちむぎ麺のまち福崎町」のロゴマークを付けて、福崎町役場の車が走っています。姫路市の北隣で人口約2万人、面積約45k㎡の町です。

柳田國男は「村は住む人のほんの僅かな気持ちから、美しくもまずくもなるものだ」との言葉を残しています。

ほんの僅かな気持ちでいい、美しい福崎町をつくろうと努力する人が増えることを願って「自律(立)の心を育て、参画と協働のまちづくり」のスローガンを掲げています。 そして、これを支える4本の柱を立てました。

①科学の心で知を力に

町には柳田國男のほかにもう一人、文化勲章受章者が存在します。吉識雅夫で造船工学の功労者です。二人の先輩はよく勉強して知をもって社会に貢献しました。 この精神をしっかり受け継いでいこうと思っています。3・11の大震災を経験して「科学の心」を付け加えました。

私たちはこの百年の歴史の中で2度の神話の裏切りにあいました。一つは神風神話です。

日本は神国なので戦争に負けることはないと大戦に突入しましたが、敗戦となりました。

もう一つは原子力神話です。原子力エネルギーは安全、安定、安価と喧伝され安心していました。これも福島原発事故で吹き飛びました。無批判に信じて事を進めるのでなく、 多面的に検討することの大切さを学びました。

②もてなしの心で共に生きる

福崎町では、他に対して一方的に尽くすことをもてなしとせず、ギブ・アンド・テイクのバランスがとれている行為をもてなしと言っています。 どんな行為も一方的では長続きしません。「あいさつを交わしみんな仲良く」なのです。交わすという双方向が大切だと考えています。

交換をする場合は等価交換が前提です。どちらかが引き続いて不利益となることはもてなしではありません。いま日本では新自由主義的な弱肉強食の場面をよく見かけますが、 等価交換が普通となる世の中にして、貧富格差の縮小に努めることが大切ではないかと思っています。

③食育で健康増進

私たちは毎日食事をして生きています。この食事に注目して、身体的にも精神的にも社会的にも健康なまちづくりを目指しています。知育、体育、 徳育をしっかりと支えるものとして食育を位置づけています。

食育では、何でも食べましょう、朝ごはんを食べましょう、いただきます・ごちそうさまと言いましょうの3つを大切にしていますが、簡単なようでなかなかできていません。

④地産地消で活力を育てる

「米を作ってメシが食えない」という声が聞こえる農家の状況です。これでは放棄田が増え、シカやイノシシの生活圏が拡大するばかりです。 農地の集約化、経営規模拡大が進められていますが、家族農業で生活できる農業を真剣に考えないと、過疎化も日本の食料自給率向上も望めないのではないかと思います。

もち麦の増産で町おこし

平成2年に㈱もちむぎ食品センターを町、JA、商工会が中心となって設立しました。もち麦を栽培し、もちむぎ麺、焼酎、カステラ、精麦など、多くの商品を開発、加工、販売して、 今日に至っています。年商は1億6千万円程度です。

最近、大麦の研究が進められ、健康食品として注目されています。特にもち麦はβ-グルカンを多量に含んでおり、NHKで健康増進に役立つビッグな食材と放映されました。 以来、全国から注文がくるようになりました。作付面積を増やし、町おこしに寄与したいと考えています。

柳田國男生家近くの“もちむぎのやかた”は、もちむぎ麺の製造工程が見学でき、もちむぎ料理の和のレストランとして賑わっています。近くの池には河童が出没し、 観光スポットとして脚光を浴びています。ぜひおいでください。