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小さな島のまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年5月26日

長崎県小値賀町長 西 浩三

 

小値賀町は、五島列島の北端に位置する、総面積25.46k㎡の長崎県で一番小さな外海離島の町です。昭和20年から35年までは、人口は1万人を超えており、特に漁業の町として栄えていましたが、 昭和40年以降は、ご多分にもれず、少子高齢化、過疎化が進み、現在の人口は2,700人台まで減少してしまいました。

私が、大学を卒業し、故郷に帰り、小値賀町役場に奉職したのは、大阪万博が開催された頃の昭和44年で、それから40年余り、多くの仕事をさせて頂きましたが、 その中でも水産を担当した時のことを特に覚えています。

私が水産を担当したのは、平成3年度から6年度までの4年間でしたが、当時の小値賀町漁業協同組合の漁獲高は約20億円で、県内の単協ではトップクラスでした。また、 現在はほとんど水揚げされないアワビの漁獲高は約40トン、水揚げ金額にして約3億円を占め、全国有数のアワビの生産地でもありました。

当時から資源管理型の漁業を推進し、アワビの漁獲高制限等にも取り組んできましたが、その後20年間の環境の変化はものすごいものでした。当時も磯焼け現象が少し出ていましたが、 他の町に比較すると小さいとされていて、国庫補助事業でアワビ礁(築いそ)設置や他地区の藻場改善のための海藻牧場事業を実施していました。

その後、平成10年前後から本町での磯焼け現象が顕著になり、その対策に毎年色々なことが試験的に実施されています。しかし、この磯焼けは、未だ原因が特定されず、最近の調査によると、 藻場の状況では、最低ランクに位置づけられ、「日本一のアワビの里づくり」を目指してきた先人たちに大変申し訳なく思っています。

これまでの10年余り、行政として色々な取り組みをしてきている中で、未だ決め手はないものの、要因の探求は少しずつではありますが進展しているようで、 例えば磯焼けの犯人はウニだという説があります。

小値賀町では、10年前との比較調査を実施していまして、その結果でも、ここ10年で、ウニは異常発生していますし、磯焼けと同時進行で、サンゴ藻類等石灰藻も異常発生し、 10年で10倍の現存量となっています。その対策として、ウニ類の駆除にスキューバを使用して、ウニフェンス等で徹底的に管理した場所では、海藻が再び繁茂する等、それを裏づけるデータが出てきています。

また、温暖化による南方系のブダイ、イスズミやアイゴ等の植食動物の食害が、磯焼けの要因の一つと思われるデータも、海藻を網で囲って魚から保護すると、 その中では海藻が繁茂するという結果から得ています。

全国的な問題となっているこの磯焼けを解消し、20年前のように海藻が繁茂し、アワビやサザエがたくさん取れる「宝の島」に戻すことが、現在の私の夢の一つでもあります。

去年の小値賀町は、多くの栄誉を受けることが出来た年でもありました。町内のNPO法人「おぢかアイランドツーリズム協会」が「豊かなむらづくり全国表彰事業」の農林水産大臣賞を受賞し、 一方、町は、長崎県内の自治体初の「地域づくり総務大臣表彰」の大賞受賞を機に、小値賀町(おぢかちょう)と正しく読んでいただけるようになりました。

本町は、西海国立公園に指定され、また、「小値賀諸島の文化的景観」が、重要文化的景観として国の選定を受けるなど、美しい自然と文化的な価値が高く評価されており、現在、 それらの資源を活用した体験型観光を積極的に推進しており、最近では、「海風の国」佐世保・小値賀観光圏として観光庁の認定も受けています。

25年度末には、小値賀町総合計画を策定しましたが、「美しい海のまち」「生き生きとした産業のまち」「ふれあいとやすらぎのまち」の3つの基本理念を継承し、 小値賀町が持つ潜在的な魅力(恵まれた自然環境や歴史文化)を大切にする社会環境の整備を図りながら、 外部から交流で町を訪れる人達にも魅力を感じさせる、「訪れてよし、住んでよし」のまちづくりを目指したいと思っています。

交通の便があまり良くない町ですが、ぜひ一度お訪ね下さい。