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祖先へのロマン

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年8月6日

祖先へのロマン

秋田県五城目町長 渡邉 彦兵衛

この度、「随想」、内容は自由という依頼を頂いた。中味は余りにも自由の度を越え、失笑を買うものと思ったが、敢えてペンを執った次第である。

6月に入り当町役場はクールビズが始まった。先月の五月に大阪で五城目町のふるさと会「近畿五城目会」の総会が開催され、毎年のごとく出席をしているが、 大阪もこれから夏本番を迎えようとしており、その暑さは秋田とは比べものにならないほどの想像を絶する暑さであり、ふるさと会の中でも「長年ここに住んでいるが、 ここの暑さは今でも耐えがたい」と言うことをよく耳にする。

さて、その暑さをひとまずとして、この近畿大阪に来る度に、戦国時代この一帯を支配し、天下統一を謀った武将織田信長を思い出す。というのは、16世紀末、 浄土真宗徒だった私の祖先(一向宗徒の領主)は、織田信長の一向一揆の弾圧から逃れるために、加賀国松任(石川県松任市。現在合併により白山市松任)より一族が 日本海を北上し、一時、男鹿脇本に入り、それから五城目に入ったと伝えられている。

そして江戸時代に入り、1688年(元禄元年、徳川五代将軍綱吉の頃)に渡邉家の末裔である初代彦兵衛が現在の地、五城目町で酒造りを始め、現代に至っている。 今は、息子が跡を引き継いでいるが、私の役目は出来上がった酒を利き酒するのみである。ちなみに私は利き酒師ではない。

時折、町内の卒寿や紀寿を迎えられた方の長寿祝いに伺うが、皆様は、健康で笑顔がすばらしい方々で、長寿の秘訣を尋ねると何でも食べることと、 常に腹八分目にすることで特に男性はそれに加え、「若い時分は、よくお酒を嗜んだものだ」と言われる。

私が20代の頃は、日本酒は「どんぶり」で飲むものだと教えられたものである。当然翌日は二日酔い。当時の若い世代には日本酒のイメージは、 決して良いとは言えない面もあったと思う。

以前、NHKの「クローズアップ現代」で日本酒を取り上げた番組が放映され、キャスターの国谷裕子さんは、いつもは社会経済問題などで厳しい表情で お話しているが、その番組に限って終始笑顔で日本酒の様々なすばらしさを語っていた。

新潟県上越市旧吉川町の高等学校に全国唯一の醸造科があり、高校生が酒造りをすると言うことで注目を集めた。町全体が酒造りの環境にあり、 それが教育の一環として捉えられているのには驚かされた。もちろん高校生であるため、造り上げたは香りを嗅ぐだけであるが、長い歴史を持つこの醸造科が 残念ながら廃止となったと伺っている。

近年、都内や地方で日本酒のイベントを開催すると「来場者の半数以上が三十代から四十代を中心とした女性が占める」と息子から聞いた。その世代の女性たちは、 日本酒と料理のマッチングを楽しみ、また一方では数ある日本酒をあれこれと選びながら飲み比べを楽しんでいるとのこと。

日本酒は、昔より「百薬の長」と言われ続けてきたが、改めて日本酒の効果を滝沢行雄医学博士の説を例にとり綴ってみた。

糖尿病には、日本酒の糖分が良くないとか、カロリーが高いとか言われているが、直接の因果関係がないことは既にご承知の通りである。滝沢先生は、 日本酒には制ガン効果があると発表し、話題を呼んだ。肝硬変や肝ガンは、日本酒を良く飲む東日本の人たちの死亡率が非常に低いことが分かり、 ヒトのガン細胞に日本酒の濃縮液を添加し、実験をしたところ、ガン細胞の増殖が著しく抑制されたとのこと。どの成分が制ガン作用を持つか今後の課題であるが、 日本酒の効果は事実として知ってほしいと発表している。

この他にも日本酒には様々な効果・効能があるが、飲み方にも同一のお酒で、冷や・常温・燗・ロックと四つの楽しみ方ができる。

しかし、既にお気付きのように、全ては適量がなせる業であり、ご自愛のほど。

執筆した内容は、既に自由の枠を大きく越え、十分失笑を買ったものと思うが、いつの日か日本海を逆に南下し、先祖が住んでいた石川県の松任にロマンを求め、 訪れたいと思っているところである。