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自治の原点から、自治の発展へ

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年9月26日

自治の原点から、自治の発展へ

北海道奈井江町長 北 良治

□震災に思う
ひとつの自治体をあずかる首長として、未曾有の震災と原発事故に直面し、その困難の中で奮闘している自治体の皆さんの苦労、そして被災地の一日も早い復興を思わずにはいられない。しかし、その復興が遅々として進んでいないように見受けられる状況に対して、政権与党、政治家は一体何をやっているのだという歯がゆさで一杯だ。私ですらそうなのだから、被災地の住民の国に対する不信感は一層のことだろう。

復興には、被災地の住民の立場になって、住民と共に地域を創り上げていこうという姿勢が不可欠だ。この姿勢がなければ、課題の解決は図れない。
 
□自治の原点とは
平成15年、奈井江町では市町村合併問題に関する住民投票を行った。この投票には、小学校5年生から高校3年生が、結果を参考にする「子ども投票」として参加した。これは全国初の取組として大きな注目を集めたが、重要だったのは、マスコミが飛びついた「小学生も投票」というその一見した派手さではない。子ども投票の背景には、地道に子どもとも情報を共有し、議論して進めてきたまちづくりの取組があったのだ。

「情報を共有し、住民とともに考える」。これは、私が町政運営において最も重要としてきた原則であり、合併問題においても徹底した。町独自の情報誌の発行は8回を数え、町民や各種団体との懇談会は、平成15年度では4月から(投票のあった月の)10月までで30回近くに及んだ。住民との情報の共有に加えて、子どもたちが投票に参加することにより、家庭で町の将来について話し合う機会が生まれるなど、大人たちへの高い関心へと結びついたのだ。

住民投票は大人も子どもも75%以上という投票率の結果“当面は自律”という選択になったが、この「住民が自ら町の進路の決定に参画した」ことは、その後の“自律”に向けた行財政改革における、町民の多大な協力姿勢に繋がった。合併問題における情報共有と住民投票を経て、住民が主体的に町の将来を考え、行動するという、自治のひとつの形が確立しつつある。

このように、自治は住民参加があって成り立つものであり、住民参加の原点は、徹底した情報の共有だ。今、この困難な時代であるからこそ、自治の原点に立ち戻る必要があるのではないか。
 
□ 自治の発展には
  ~重層的な広域連携~

震災に加え、この原稿を書いている8月には、アメリカ国債の格下げから、円高、株安へと世界的な経済不安が広がっている。経済においてアメリカの力強さが失われつつある印象が一層、際立ってきている。

経済社会の混迷は、私たち自治体にも少なからず影響を与える。そのような時代を乗り切って行くためには、国と自治体の役割を明確にし、地方分権をもっと進めなければならない。この困難と厳しさが伴う時代に、国と自治体はもっと話し合い、国においては、地域の実情を正確に把握し、必要な財源を確保して、自治体でできることをもっと自治体にやらせるべきだ。

自治体にあっては、住民本位の行政を進めなければならないが、私たち自治体は、1町(村)繁栄という考え方を捨てなければならない。地域全体で、どのように連携して発展・繁栄していくか、広い視野が必要だ。

権限・財源の移譲を進めようとするとき、1自治体が受ける、または、1自治体を中心として(周辺の市町村は付随的に)受ける、というのは、偏りがある。医療はA市、農業はB町、文化芸術はC村というように、それぞれが持っている伝統や資源の特徴を生かして地域全体で権限・財源の移譲を受け、それぞれの地域が役割を果たすという、いわば重層的な広域連携による地域づくりで、地域全体の発展を進めるべきだ。
 
情報共有と住民参加を基本にした住民自治。そして、重層的な広域連携。この困難で厳しい時代を乗り切るには、自治の原点を踏み固め、自治体間の連携で発展させていく――。この2つの視点を私たち町村が共有して、自治を発展・確立させていこうではないか。