ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村長随想 > 重なる復興への想い

重なる復興への想い

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年7月4日

京都府久御山町長 坂本信夫

去る4月29日、関空より出立し、オーストラリアのクィーンズランド州ワーウィック市を訪ねました。そこは町立久御山中学校の姉妹校であるワーウィック・ステート・ハイスクールがある市で、同市で開催された「ピース・フェスティバル2011」への招待を受けたのです。
ピース・フェスティバルは、平和に対する想いを同じくする市民の自主グループが、その実現に向けて実行委員会を組織し、運営しているイベントです。隔年で開催され、今回で4回目です。フェスティバルの内容は、サッカー・カーニバルやコンサート、文化発表があり、今回はもともと交流があったサッカーチームと大正琴の文化サークルが久御山から参加しました。
このコンサートには大正琴サークルも出演したのですが、今年3月に起こった東日本大震災の被災地に対するチャリティ・コンサートにするという申し出がありました。実はこのピース・フェスティバルのスタッフのお一人に、息子さんが仙台に住んでいらっしゃるという方がおられ、被災直後のまだ郵便が正常に機能していない時にワーウィックからの支援物資を彼宛てに転送したこともあるのです。
海外のメディアの多くは被災地の状況を、ありのまま報道しているそうです。それこそご遺体の映像も、です。まして身近な者が被災地にいて、過酷な状況が毎日知らされるとあっては、私たちよりも心を痛めておられる状態でしょう。災害直後に消防隊員と給水隊員30余人を久御山町からも派遣しましたが、その期間だけでも彼らの安否を大変心配したものです。さらに遠く離れた場所から、気丈に息子のために何かできることを探す気持ちの強さ、また、周りがそれを支援し実現する意志の強さに、大変心を打たれました。
現地へは、東海岸ゴールドコーストから内陸部へ向かいます。山に差し掛かると広大な牧草地・農地が広がり、日本とはあまりの規模の大きさの違いに圧倒されます。山を越える際、土砂崩れの跡、でこぼこした道、工事中の表示を何度か目にしました。クィーンズランド州は、昨年末から今年初めにかけて集中豪雨による大規模な洪水が起こりました。その被害は甚大で、面積は日本全土に匹敵するほどと言われています。当該のワーウィック市も川が氾濫し、広範囲が浸水するなど大きな被害があったことを聞いています。確かに、かなり上の方まで色が変わった大木や、引っかかっているゴミが水害の酷さを窺わせていましたが、驚くべきはその復興の力強さです!山を越えて広がる街並みはきれいに整備され、明るく暮らす人々の元気が伝わってきます。フェスティバル会場も水没したそうなのですが、被害の跡は見事に消えて、スタッフの方々も含めてイベントに参加する皆さんの、心から楽しむ姿が印象的でした。自分たちが力強く復興したからこそ、日本の震災にも心を砕いてくださるのでしょう。
同市へは8年ぶり2度目の訪問なのですが、街並みには水害からの復興だけでなく、その発展による変貌にも驚かされました。道路が広げられ、8年前には2か所しかなかった宿泊施設がいくつも増えていました。郊外の開発も進み、都市部からの人口流入も近年激増しているそうです。私が現地で会った行政関係者の方々とは、都市計画や経済についての議論を交わし、その意識の高さに触れました。
好景気が続くオーストラリア、とりわけ開発が進む郊外ではビジネスに対する関心が深く、私が現地で行った「久御山町農産物直売所」についてのスピーチにも興味を持って聞いていただけたと自負しております。この直売所は久御山にある大規模商業施設のイオンに併設された非常に小さな売店で、この小さなビジネスモデルが非常に珍しかったようです。
復興、発展、ビジネス。現地ではたくさんの熱い想いと温かい気持ちに触れました。彼らの力強さとともに、日本も必ず復興し、久御山町としても尽力する決意をあらためて固めた訪問となりました。