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人口減少社会における町村経営

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年4月18日

福井県高浜町長 野瀬 豊

去る2月22日、国土交通省より発表された「国土の長期展望・中間とりまとめ」によると、2050年の我が国の人口は現在より25.5%減少し9,515万人になると予想されています。
また、三大都市圏への人口流出も止まらず、減少率が50%を超す地域が6割を超え、人口が6,000~10,000人の市町村は、人口がほぼ半減するとの推計が出されました。
まさに町村においては、過去にない急激な構造変化が目前に迫ってきていると言えます。
このような従来の処方箋では対応できない環境変化に対し、どのような施策を打ち出し、実践していくのかについては、各自治体においても頭を悩まされている事と思います。  
現在、高浜町の人口は11,500人。規模から見れば長期展望予想において40年後に人口が半減すると予想される自治体です。
まず考えられるのが、住民を増やすためのIターン・Uターン施策、若い世代の定住化を目指す子育て支援策、雇用の場を創出する企業誘致など人口流出を防ぐ考え方も大切ですが、他方 人口減少という現実を受け入れた地域づくりのイメージも持つ必要があります。
そして、そのキーワードは「スマート化」にあると感じています。
「スマート」の直訳は「賢い」ですが、私は自治体経営におけるスマート化を「賢い最適化」と捉えています。人口が右肩上がりで増えていった時代では、居住地域の拡大に合わせ道路や水道、公共施設などを面的に拡大する方向にありましたが、今後は増加した施設や機能を集約・集積する、いわゆるコンパクトシティー発想が求められます。
つまり、拡大した前線を少数で維持するのではなく、いくつかの前線をたたみながら限られたリソースを再編成し、強い前線を創り上げていく発想です。
当町における過去の施設整備の流れを検証すると、部分最適が発想の基本になっていたように思えます。「地区からコミュニティ施設の要望があり整備する」「ここに町有地があるから用地はここにする」。こういった部分最適発想の結末は、施設の分散、機能の重複をまねき、結果的に維持管理コストの増大、ひいては経常収支比率が高止まりということになります。
このような状況下、当町においても高浜コンパクトシティー構想に着手し始めました。
老朽化した庁舎と中央公民館の一体化、病院近辺に介護・福祉機能を集積する他、空洞化が進む中心市街地を居住地として再生させようとする計画です。
発想の基本は「全体最適」。つまり町政課題を鳥瞰で捉え、人口減少社会にも対応できる行政サービスの提供体制をイメージした帰結です。
しかしながら、このようなコンパクトシティー発想は「効率化」は図られますが、住民(特に周辺地域の住民)のニーズとのギャップが生まれる側面も抱えています。
特に高齢化が進む今後は、中心市街地と周辺地域を結ぶモビリティシステム(公共交通)が最大の課題となります。
現在、当町においてはスクールバスの他、ジャンボタクシー、デマンドタクシーの3つの公共交通を走らせています。しかしながら、これらは限られた利用者を3つの手段に分散させているため、時間帯によっては空気を運んでいる状況も少なくありません。
コンパクトシティー発想と一体不可分といえるこの公共交通もまた、まだスマート化できる余地を含んでおり、人の移動だけでなく、モノやサービスを含めた新しく、賢いモビリティシステムの検討にも着手を始めております。
 
やや、夢物語に感じられる要素もあろうかと思いますが、時代の環境変化は想像以上に早く、これからの行政は先を読む洞察と発想の転換、さらに迅速な意思判断が求められます。そして課題と直面している町村は、自らが適切なソリューションを考え実践していかねばなりません。
日本再生が叫ばれて久しいですが、実はその解決策は現場である町村から発信されるように感じているのは、きっと私だけではないでしょう。