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『嗚呼 箱根駅伝』

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年3月21日

神奈川県箱根町長 山口昇士

 駅伝を讃えて
  若い豹は春の象徴
  君たちが走ると
  東海に春がよみがえる
  富士はおおらかに微笑み
  相模の海は夢多い調べをおくる
  君たちは意志と力の群像
  君たちは青春の花々
  赤や海老茶や紫が入りみだれて
  春のさきがけのテープを織りなす
  君たちは光のようにはつらつと走り
  町々を 並木を 野を 山を
  呼びさます 春のつばさ
  東京箱根間大学駅伝
  二日間のレースは
  二つないスポーツの交響楽
  自然の美とスポーツの美の
  明るく展ける新春のフィルム
  よろこびと涙を
  わかち合う二百二十キロ
  若い日の楽しい感激よ
              勝 承夫
これは富士山を臨む芦ノ湖畔箱根駅伝のゴール近くに建つ文字通り箱根駅伝を讃える碑である。今や国民的スポーツイベントになったともいえる箱根駅伝(正式には東京箱根間往復大学駅伝競走)。テレビの瞬間視聴率は30パーセントを超す。
さて、今年の第87回箱根駅伝はどうだったか、結果は皆さん先刻ご承知のこと。シード権を持つ東洋、駒澤、山梨学院、中央、東農、城西、早稲田、青山学院、日体、明治の10校に加え昨年10月、30余校の激戦を勝ち抜き出場権を得た拓殖、國學院、帝京、中央学院、上武、東海、日本、神奈川、専修と関東学連選抜の10校で競われた。
東洋大の三連覇成るか、出雲駅伝、全日本大学駅伝選手権に優勝し駅伝三冠がかかる早稲田大か。駅伝ファンならずとも例年以上に関心が集まる大会となった。果たして総合優勝したのは早稲田大学であった。
この箱根駅伝は標高差860メートルを上り下りする箱根山中が勝負どころである。数々のドラマが、そして番狂せがこの5区・6区で生まれた。時には雪降る中、時には強い風を受けながら、ひたすら襷を次に継ぐことだけを思い走る選手に、応援する人々は感動し、惜しみない声援を送ってきた。
箱根町では側面から箱根駅伝を支援させて頂いている。往路優勝チームには、国の伝統的工芸品に指定されている箱根寄木細工製の優勝トロフィーとメダルを授与している。加えて5区と6区の全校の選手の力走を讃え、写真パネルを贈呈している。
箱根の正月は駅伝からと言われるが、全町挙げて、選手、そして応援する観光客の皆さんを温かく迎え、もてなしている。この箱根駅伝からシチューパンという名物も生まれている。
小田原市の国道一号近くで生まれ育った私にとって、箱根駅伝は極く身近な存在であった。物心つく頃にはどこの大学が強い、あの選手は走りが良いと、大人に交じって評論家気取りであったし、冬休みには贔屓の大学のゼッケンを作り、家のまわりを駆け回るのが毎日の遊びであった。駅伝が近付くにつれ、毎年そのことが鮮明に甦る。
箱根駅伝は箱根町にとってなくてはならない、大事にしたいスポーツイベントである。テレビ、ラジオを通じて箱根という名前が全国に流れ、紙面を飾る。有難いことである。これからも出来る限りの支援をしていきたいと思う。