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 1/3の職員削減達成  そして 人にやさしい 人がやさしい 町造り

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年2月21日

奈良県広陵町長 平岡 仁

広陵町は、奈良県の中央部にありながら国道もなく、高速道路もない草深い田舎町ですが、自然環境が良いので宅地開発が進み、なぜか人口は今日まで減ったことはありません。奈良県の町村で人口が一番多い34,200人の町で、4万人を目指しているのです。
「人にやさしい 人がやさしい 元気な町」
として、町民の皆様方とともにがんばっています。
歴史的にもロマン溢れる古墳の町でもあり、竹取物語でおなじみの「かぐや姫の誕生地」でもあります。産業は、靴下の生産地として全国的にも知られています。更にオリンピックの金メダルが4個(柔道)ある町でもあります。
私は、町長職10年目であり、職員として奉職して、課長、部長、助役を経て、連続3期なのです。この町で生まれ育って70年、ほとんど町を知り尽くしていると自負しています。
役所は運営から経営に  
 
「お役所日の丸」の考えでは、町の発展はありません。公務であっても企業意識を持ち、時代に即応した経営感覚が必要です。
町長、副町長、教育長を町三役とし、部長職6名を加えて「経営会議」を毎週月曜日に催し、主要施策の推進策など課題解決を図っているのです。日々の行政の動きを経営と捉えて行政のトップが集団で適切な決定、指示をしており会社では取締役会です。
広陵町の年間予算は120億円で、特別会計を含めると180億円規模の健全経営を維持しています。
なぜ自慢できるのかと言えば、新しいゴミ処理施設を3年前に稼働させました。焼却方式から全く新しいRDF炭化方式に、用地を取得して燃料工場の新設です。地元整備も含めて総額118億円投資したのです。お陰で、全国自治体が、また昨年暮れには韓国からも視察に来られました。RDF炭化施設では、私は日本一、いや世界一と自負しております。
多額の歳出により財政は厳しくなるのは当然です。そこで、人件費削減に及び、少数精鋭で住民サービスを考えたのです。現在189名まで正職員を削減し、ピーク時の1/3を超えたのです。基本的には定年や中途退職者の補充をしない方式で、十年を要したのです。県下自治体にあっては、対住民当たりの職員数は県一番であり、全国でも1/3職員減した自治体は聞き及んでいません。議会、町民の皆様からも御理解をいただき、職員も快く応えていただいたお陰です。削減したからといって住民サービスをマイナスにしてはなりません。それがため、
①シルバー人材センターの活用
②専門職員の支援スタッフ雇用
③事務事業の民間委託
などにより、住民サービスを更に拡大したのです。職員は常に現状に妥協せず、不満足の心で新たな挑戦を促し、与えられた職場で力を出してくれたのです。町民の信頼を築くとともに、財政的にも大きな成果を出していると自負しています。
子どもの健全育成と人にやさしい町造り
私は、サイレンの音とともにB29が飛来、近くの防空壕に避難し、投下する爆弾の音を聞いた戦争の恐ろしさを体験したのです。戦後、すべての人々はきびしい生活を営み、明日を夢見て子育てに親たちは一生懸命汗水を流したのです。私共は、親とあまり話すことなく、親の背中を見て生きてきた。食材のため川で魚やエビガニ、台湾ドジョウ、田んぼでは、タニシやイナゴ採り、山ではキノコや風呂の薪まで家に持ち帰った。遊びは、鞄を家先に放り投げ、ゴミの流れる川で泳いだり、道路や田畑で野球、河川敷で戦争ごっこ。遊びのすべてが親や近所のおじさん、おばさんに叱られ、追いかけられて育ったのです。それがまた楽しかった。年の差や男女を意識せず日が暮れるまで一緒に遊びほうけ、お陰で今も絆は固い。
今はどうでしょうか。テレビ、ゲーム機、携帯電話、学習塾、スポーツ、おけいこで子どもたちは大変です。遊びのゆとりがありませんが頑張っている。登下校は大人に見守られての集団行動と、今と昔と随分違っている。頭はさすが優れているが、社会人として役立つのでしょうか。家庭がいくら恵まれても、優れた学校の先生がおられても、地域の力が失われていると痛感します。地域の教育力を高めることが大事だと思います。隣近所の声掛け、励まし、地域行事の参加を行政が促すことです。叱ることの大切さを知るべきで、地域力で子どもが健全に育つのです。だから、私は住民の皆様と一緒に町育てのために、「人にやさしい 人がやさしい町造り」を提唱しています。優しさばかりでは育ちません。叱る、誉める・・・・これは心を育てることなのです。子どもの元気な声は私共にも勇気、元気を与えてくれるのです。