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 「第一二回日本水大賞」受賞

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年9月27日

香川県町村会長 多度津町長 小國宏

日本水大賞とは、安全な水、きれいな水おいしい水にあふれる21世紀の日本と地球を目指し、水循環系に貢献した活動に対し、顕彰する制度です。
主催は、日本水大賞委員会で秋篠宮文仁親王殿下が務められておられ、関係各省が後援されております。
毎年7月1日の「水の日記念日」に活動発表及び表彰式が開催されております。
【わが町の紹介】
多度津町は、香川県の中央部に位置し、北は風光明媚な瀬戸内海国立公園、南は緑豊かな讃岐平野が広がり、美しい自然に恵まれ、人口は、約24,000人の小さな町です。
昭和44年に多度津町臨海土地造成事業に着手し、約190ヘクタールを埋め立てることにより工業団地を中心として2社の造船会社、橋梁、食品産業など約50社の企業誘致を行いました。
また温暖で肥沃な土地を生かした稲作や麦作、ぶどうやミニトマトに代表される農業が行われています。
平成12年には、町制施行110周年を記念して全国自治体に先駆け、「環境のまち」宣言を行い、町制120周年を迎えた本年は、21世紀の新しい社会づくり循環型社会の構築を主要施策として「人・環境にやさしいまちづくり」を基本とした町政を進めています。
【事業のきっかけ】
当町は、水資源に恵まれず、昔から渇水による水不足に悩まされ、汚濁化が進んだ土地柄です。
住民生活の基盤である上水は、地下水源に恵まれておりますが、近年、水質についての心配から膜処理施設を建設しました。
平成6年の大渇水は、当町も産業や農業に大きな影響があり、このような経験を踏まえ、平成9年に安定的な水資源を確保するため、関係各課の職員が企画立案する中で注目したのが1市3町で構成する香川県中讃流域関連公共下水道金倉川浄化センターの下水道放流水を新たな水資源として活用するものでありました。
【事業の概要】
この事業は、終末処理場から海へ放流しておりました下水道放流水を高度処理技術で復活させ『多度津町再生水利用計画事業』として進めているもので、特徴として次の4点があげられます。
1点目として、一市3町で構成している中讃流域下水道金倉川浄化センターの放流水をさらに高度処理し上流約6キロメートル地点まで送水し、「農業用水」「修景用水」「河川維持用水」などに活用する節水型リサイクル社会の形成。
2点目として、下水道の普及により川の水質は良好になったが、反面、水量不足による悪臭の発生や生態系の変化による環境破壊が進んでいる。その解決策として、上流より下水道再生水を河川や各水路に放流することにより、水質及び環境保全の推進。
3点目として、本町では渇水による農業用水が慢性的に不足しており、農業関係者、水利関係者と協議、約1,300戸、全世帯の同意を得る中、町内最大のため池に下水道処理水を送水し、そこから町内各ため池に分配する。
日量2,000トンを送水することにより、農業用水を確保することができた。
4点目として、失われてしまった人と水の接点としての水辺環境を再生させるため、また良好な水辺空間を創出するため、「せせらぎ水路」「八幡の森ほたるの里」「親水公園」などの整備を行った。
【終わりにあたり】


『多度津町再生水利用計画事業』の取り組みや様々な活動は、今後わが国が推進すべき水資源の確保や環境分野の最重要テーマとして、そのモデル事業として、まるで教科書となる先駆的な事例として高く評価をいただき、この度「第一二回日本水大賞国土交通大臣賞」を受賞いたしました。
このモデル事業を立ち上げるにあたり、まず心配したのは、水質のあり方について、また予算の確保についてでありました。
大学の先生方をはじめ関係各省庁(当時の建設省、農林水産省、環境庁、香川県)の方々のご指導により完成したもので心より感謝申し上げます。
完成した今は、水利関係者、「ほたるを育てる会」をはじめ地元高校生によるせせらぎ水路清掃活動への参加、さらには、下水道再生水を利用した稲作体験学習などを行っています。
未来を担う子ども達が幼いころから水を通して地球環境への意識を持つことは、子ども達ひとり1人のこれからの人生に計り知れない意味を持ちます。
終わりにあたり、この事業を通じて改めて学んだことは、自然環境を壊すとそれを取り戻すのには、長い歳月と大きな財政負担が伴います。
今後も町をあげて身のまわり、自然を大切にする取り組みを進めてまいります。