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 融和を図り、地の利、天の時を待つ

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年4月26日

石川県中能登町長 杉本栄蔵

中能登町は、能登半島のほぼ中央に位置し、面積は約89平方㎞、人口は約1万9千人で、町の東側は石動山、西側は眉丈山系、中央部は邑知地溝帯の平野となっており、のどかな田園風景が広がる能登半島の市町で唯一海に面していないコンパクトな町であります。

今、中能登町の風景は、山々に新緑が芽吹き、平野部では田植えに備えて、田んぼでは代かきが終わり鏡を張った様でとても美しく、気持ちの良い季節を迎えています。

私は、毎朝、愛犬の「まつ」を連れて小一時間散歩に出ることを日課としており、凛とした朝もやの壮麗さに包まれながら、歩を進めると、すがすがしい気持ちとともに、季節の移り変わりを実感し、ご近所の皆様と朝の挨拶をかわして、さわやかな一日がはじまります。

さて、中能登町の基幹産業は、合繊繊維織物と稲作農業でありますが、かつて繊維産業は東洋一の企業集積率を誇る地域ではないかとまで言われ、にぎわっていました。しかし、アジア地域の急激な振興により急速にその数を減らしていきました。

今、お隣の国、中国では2010年上海万国博覧会が盛大に開催されようとしており、中国経済の力強さと躍動を強く感じられているのではないでしょうか。

その中国では、古来より事を成就するには「天の時」「地の利」「人の和」が大切な要素であると言われており、このことは昨年の大河ドラマ「天・地・人」で大変有名になりました。

そして、中国の儒学者の孟子は、「天のもたらす幸運は、地勢の有利さには及ばない。地勢の有利さは人心の一致には及ばない。」と言われています。

さて、中能登町も平成の大合併の中で平成17年3月1日に3町が合併して誕生した町であり、初代町長として最初に取り組んだ課題は人心の一致、「人の和」を最優先課題として町民の「融和」を図るため、合併初年度から中能登町主催の夏祭りである「織姫夏ものがたり」を開催し、旧3町の“夏祭り”のテーマである“曳山”と“御輿”と“おにぎり”を融合したイベントを開催してきました。  

次に、町内一円に光ケーブル網を整備し、ケーブルテレビ放送局の開局と音声告知端末を設置し、町民同士の情報の共有やお知らせ、独居老人への安心サービスの提供、町内の家庭同士であれば無料で通話が出来る電話機能を設置しました。

そして、子育てへの支援も最大限充実させ、中学生までの義務教育終了時まで医療費の無料化や第一子の誕生で10万円、第二子の誕生で20万円、第三子の誕生で30万円と続き第五子以降は50万円を給付する出産祝金、その他入学祝金やチャイルドシート購入補助、分譲宅地造成など、これからの日本を背負う子ども達や、現在、第一線で働いている保護者の皆様の支援を最大限に行っており「人の和を通じた融和」の施策を推進してきました。  

そうした施策の効果もあり、能登半島にありながら町の人口や児童生徒数は、ほぼ横ばいに推移している状況となっています。

また、中能登町は、奥能登にある輪島市と県都の金沢市、富山県の県都富山市とのほぼ中央に位置しており、東京と能登を結ぶ能登空港からのふるさとタクシーの利用も多く、2014年には北陸新幹線金沢開業や、能越自動車道の能登方面延伸整備による北陸自動車道への利便性も向上し、交通アクセスでの「地の利」が益々高まることが期待できます。

そして「天の時」を、地域主権や緑の分権改革をその時としてとらえ、20万点ある繊維のプリントデザインなどの地域資源を活かし、より一層、融和と社会基盤の整備を推進していかなければならないと考えています。