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 環境とアートのまち・直島

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年3月8日

香川県直島町長 濵田 孝夫


今年は、香川県の直島を含む周辺の7島と高松港周辺で、瀬戸内国際芸術祭2010という現代アートの祭典が開催されます。
私自身は、芸術とは無縁の生活をしてきましたので、芸術、特に現代アートのことはほとんど分かりません。
以前、ベネッセコーポレーション(現在はベネッセホールディングス)の代表者として、先頭に立って直島での芸術活動を進めている福武会長に「現代アートは難しい。見ても何のことだか全然分からない。」とお聞きしたことがありますが、その時のお返事は「分からなくていいのです。見る人がそれぞれ、何かを感じたらそれでいいのです。」というものでした。
見る人ごとに違った感じ方や意見があってもいいということらしいので、これを聞いて私も気が楽になった記憶があります。
直島町は、ほんの20年ほど前までは、現代アートとはまったく縁がなく、観光客といえば、夏の海水浴客と釣り客程度でした。それが今では年間に人口の100倍に当たる35万人以上の観光客が来られるようになり、特にアートに関心を持っている若い人たちが多いのに驚かされます。

古い町並みの残る本村地区には、 直島・家プロジェクトとして、古民家を活用した現代アートの常設展示場が7カ所も作られており、また、島の南部には安藤忠雄先生の設計によるモネの作品等を展示している地中美術館もあり、休日になるとそれらの観賞に来られた若いカップルなどが溢れています。
昔の直島をご存じの人だと、その 変貌に驚かれることと思いますが、確かに若い人たちを中心に来島者が増えると、町に活気が出てきてとても賑やかになりました。
以前は、町役場の周辺には食事ができるお店が1軒もありませんでしたが、今では10軒以上になっていますし、民宿も古い民家を改築するなどして次々とできています。
ただ、これだけ多くの人々が来られていると、この地域に住んでいる人たちから、道路一杯に歩行者がいて危なくて車が走れない、細い路地にまで見知らぬ人が入ってきて物騒だというような声が出始めています。
直島に来られる人が急に増えたということで、その受入体制がまだ十分でないという面が大きいですが、これからは来られる人にも地元の住民にも満足してもらえるように、いろいろ対策を考えて行く必要があると思っています。
一方、直島町のもう一つのまちづくりの看板が「環境」であり、これからの時代は資源の無い日本にとって、廃棄物も資源であるという認識に立ち、循環型社会構築の先進地として社会に貢献しながら町の活性化を図ろうと、豊島廃棄物等の処理受入に伴うエコタウン事業の展開と、いろいろなソフト事業への取り組みを進めているところです。

しかし、アートに較べると地味なこともあって、豊島廃棄物等を処理している直島環境センターの見学者は減少傾向ですし、三菱マテリアルの廃棄物処理施設や銅や金などの製錬工場の見学者も多くはありません。  


何か環境面で目玉になる事業をやりたいと考えているところですが、残念ながらまだその答えは見つけられていません。
また、アートと環境の他にも、以前からの幼保一元化や外国人による 英語教育、安藤忠雄先生などの建築群、金・銀・銅を生産する先進企業、そして瀬戸内海国立公園の自然美にあふれる小さいながら見所いっぱいの元気のある町です。

とりあえず今年は、目の前に迫っ ている瀬戸内国際芸術祭を成功させることが、これからの直島町の発展にとても大きな影響を及ぼすと考えていますので、町独自の実行委員会を設立して、町民総ぐるみでの取り組みを進めているところです。
この瀬戸内国際芸術祭は、今年の7月19日・海の日から10月末日までの105日間で、直島だけでなく周辺の島々にもすばらしいアート作品が多く展示されることから、とてもたくさんの皆様が来島されると思っており、いかに満足して喜んで帰っていただくかが大きな課題だと考えています。
今年の夏から秋にかけては瀬戸内海が熱いですので、ぜひ皆さんも一度お越しください。