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 瀬戸内海より

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年1月11日

瀬戸内海より

愛媛県上島町長 上村 俊之


万葉集の中で、山部赤人が詠んだ歌に「すめらぎの 神のみことの敷きいます 国のことごと 湯はしも さはにあれども 島山の よろしき国と」という一節があります。その意味は、全国には温泉がたくさんあるけれども、伊予の国にはそれ以上にすばらしい島や海の美しさがある、ということであり、いにしえより瀬戸内の美しさは広く日本に知れ渡っていたようです。

上島町を紹介するときには、「半径200キロメートルで下関と神戸に円弧がかかる瀬戸内海の中央に位置する離島で、日本に5校しかない商船高等専門学校があり、世界の海運を支える『船乗りと造船の町』」と説明していまし昨年の8月24日からは「ベルリン世界陸上やり投げにおいて、日本初の銅メダルを獲得した、村上幸史選手のふるさと」と変更しています。先日もアジア大会で優勝され、日本代表として輝かしい軌跡を刻みつつあります。

上島町は7つの有人島と18の無人島からなり、その多島美は瀬戸内海を代表する景観を誇っています。少子高齢化により、人口も8千人を割ってしまいましたが、10月にはこの小さな島々に7つの神社からそれぞれの御神体を乗せた神輿が繰り出し、12を超える太鼓台が秋祭りを彩ります。海を交流の要として栄えた先人達が残してくれた伝統や文化は、私達町民が考えている以上に情緒があり、町外の皆さんを魅了する力を持っています。

観光庁が、外国人観光客を呼び込む本年のキャンペーン「ビジット・ジャパン・イヤー」で、海外に紹介する最重点観光地に瀬戸内海を選んだこともあり、やっと、いよいよ瀬戸内海の本当の美しさを世界に広めるチャンスがやってきました。

日本中の皆さんとの交流も楽しみであり、本年が「世界観光瀬戸内の始まりの年」になることを期待し、島四国で培われた「おもてなしの心」でお迎えしたいと思っています。

さて、私は学生時代に武道をやっていたせいか、最近の政治、特に国政の動きに「日本はこれでいいのか」 と感じることが多くなってきました。

日本人の誇りである武士道や「仁」の精神に、我が身を犠牲にしてでも他人のために尽くすことや、弱い者いじめを見たら、自分の身を挺してでも弱い者を助けることが挙げられます。

しかし、「三位一体改革」や「郵政民営化」、あるいは行政刷新会議の「事業仕分け」の手法を見ていると、弱い者や抵抗できる立場にない者を権力という武器で打ちのめしているようで、私は不快感を覚えています。効率だけを求めるのなら、経済原理やコンピューターだけでやればよく、政治家はいりません。「天下り」や「姥捨て山」など、実態を知らない「言葉遊び」で世の中が大きく動いている現状に、努力をしている人や我が身を犠牲にしてでも国家や地域に尽くしてくれている人達の、ため息が聞こえてくるような気がします。「天下り」や「官僚」が全て悪いのではなく、不正や無駄使いが悪いのです。「姥捨て山」と呼ばれた後期高齢者医療制度のどこが悪いのか具体的に示すべきであり、我が町の住民からは何の苦情も出ていません。

『国家の品格』(藤原正彦著・新潮新書)にある、直接役に立たないことを尊び、金銭や世俗的なものを低く見る日本の底力を、100年に1度といわれる不況の今だからこそ世界に示すべきです。何でも与えるのではなく、「やせがまん」することも時には必要であることを、子供達に教えることが親の役目ではないでしょうか。

思うままを羅列してしまいましたが、全国町村会が今後も「名」に走ることなく、地方の「実」のために闘う集団で有り続けることを心から願っています。