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 心豊かでぬくもりあふれる自立の村づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年11月2日

奈良県山添村長 窪田剛久


奈良県の山添村は、奈良県の北東部に位置し、66平方kmの面積と人口4,500人足らずの小さな村です。昭和の合併で近隣の3つの村が合併し誕生した山添村は、茶、米、野菜等を基幹作物とする農山村です。平成の合併では、合併を選択せずに自立の村づくりに取り組んでおります。奈良市、天理市、三重県名張市、伊賀市等にも比較的近く、村の中心を横断する名古屋と大阪を結ぶ名阪国道は、村内に3カ所のインターチェンジがあり、また奈良市から名張市までは特級県道が整備されていることもあり、農山村とはいえ道路環境は良好です。住民は勤勉で人情深く、ぬくもりの村と言われております。
こんな静かな村でありますが、平成の合併論議においては、村内が賛否両論に分かれる激しい争いがありました。当時は、住民投票の結果を重くみた村長が合併せずに自立をめざしましたが、1年余りで辞任を余儀なくされる程に村政は混乱し、「こんな時に火中の栗は…。」と誰もが尻込みするばかりでありました。そんな中、自動車販売会社に勤務していた私は、住民の意向である住民投票の結果を重視し、合併せずに自立していく村づくりをめざして村長選挙に出馬し、合併派の候補と厳しい選挙戦の末かろうじて勝利したのは平成16年5月でした。
当選後も、合併賛成派の厳しい要望が続いて村内も大変混乱し、さらに対立が深まる様相の中、三位一体改革や地方交付税の削減等がこれに拍車をかけ未曾有の厳しい村政運営をしておりました。特に財政状況は長年の起債増大でその返還に大変苦心いたしました。村長就任後、やはり健全財政確立が村にとって第一であると考え、健全財政確立を村づくりの第一目標として、9カ条に及ぶ行財政改革の骨子を議会に提案したのち、延べ20数日の説明会を開いて村民ひとりひとりに理解を求めました。保育園・小学校・公民館等の統合、村内施設の運営方法の見直し、行政組織の改革、そして何よりも大切な村民意識の改革を提案いたしました。
市町村合併問題が下火になってきたころ、提案した小学校統合問題について再び反対運動がおこり、厳しい状況に戻りました。当時はこの小さな村に6校もあった小学校を段階的に3校に統合していたものを、さらに1校とすることを提案したためであります。本来ならば複式学級となる児童のいない学年や、2~3人の学年を地域の要望により、村費講師の雇用で解消を図る現状が果たしてよいのか。教育効果や社会性に富んだ教育の点から将来この村の教育はこれでよいのか。私はそれらをPTAや地域の方々に説明し理解を求めました。将来の不安は分かっていても小規模学校の利点ばかりを論じ、なかなか同意は得られませんでした。その後も根強く議論を続けた結果、任期満了の2か月前にようやく全校バス通学や30人学級の実施、教育内容・学校施設の充実等に取り組むことでご理解いただき、20年4月の全村1小学校統合を成し遂げることができました。
行政経験のない私が1期目を何とか勤め上げることができたのも議会を始め多くの皆様方のご支援のたまものと感謝しているところでございます。
1期目を振り返ってみると、保育園・小学校の統合や他の自治体に先駆けて収入役の廃止、行政組織の再編、直営のゴミ収集、学童保育の実施、税徴収部門の強化等々、提案した行財政改革もほぼ成し遂げ、国保・介護保険の低額料金運営、老人の医療費額県内最少、小学校卒業までの医療費無料化など、ささやかな成果も現れています。何よりも市町村合併問題で混乱していた村が、住民の心をひとつにして自立の村づくりに取り組む姿が目に見えてきたことはうれしい限りです。2期目においては「小さくても良い輝き夢のある日本一の村をめざして」をスローガンに、今日まで積みあげてきたことに新たな取り組みを加えた次の5項目を提案し、円満で和のある落ち着いた村づくりに取り組んでいきたいと思います。
1.安心安全の村
健全財政確立、老人・こどもの 交通安全、安心できる生活環境
2.福祉と健康の村
住民健診の充実、小学校卒業までの医療費無料、国保・介護保険低額運営、診療所充実
3.教育と文化を育む村
教育内容・機器・施設の充実、30人学級、伝統文化の継承
4.農林商工業を振興する村
農業の振興〈茶・野菜・米〉、農業グループづくり、直売所
5.観光とにぎわいの村
案内板、観光ボランティア、ルー ト作成、イベントPR
山添村は、10ヵ年総合計画を基本として、さらに各項目の充実を図っていきます。先人たちが努力して守り育てていただいた山添村をさらに進展することを、そして「全国に輝く日本一の村づくり」を大きな目標として地道に努力していきます。皆様方のご指導をお願いいたします。