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 アメリカ紀行

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年8月31日

鳥取県北栄町長 松本 昭夫


2000年10月14日~22日の間、私達、市町村振興協議会訪問団(市町村関係者7名、市町村振興課2名、県国際課3名)はアメリカの地方自治体の行政制度等を視察し、地方分権時代の市町村のあり方の参考とすることを目的に渡米いたしました。
関西空港からダラス経由で、まずワシントンに到着いたしました。ホワイトハウス、国会議事堂、リンカーン記念堂等を見学し、ここがアメリカのみならず全世界をリードする場所であるかと思うと大変興奮いたしました。次に初めの視察地であるカナダとの国境にあるバーモント州に行きました。丁度、紅葉の時期であり上空から見るとまるで赤や黄の絨毯を敷き詰めたようにメープルリーフが色鮮やかに染まっていて大感激いたしました。ここでは「タウンミーティング」についての現状や課題の聞き取りを行いましたが、ニューイングランド地方にあり、古くからの行政方式である直接民主制がとられ、その中で物事が決定されるようですが、近年参加者が少なくなり、色々工夫をしながら開催しているという事でありました。次の訪問地に行く前にニューヨークの自治体国際化協会に立ち寄り、北米地域と日本の自治体の交流状況等の聞き取りを行いましたが、その中で「アメリカ人は成功してトヨタのレクサスに乗るのがステータスとなっている」という所長の言葉が印象的であり、日本の企業力、技術力の素晴らしさに感嘆いたしました。
次にミシシッピー川の中流に位置する、ミズーリ州セントルイスの隣にあるチェスターフィルド市に「ホームルール」についての訪問をいたしました。セントルイスは西部への入り口であり、ミシシッピー川の西岸にはアーチ状のゲートウェイ(西部への入り口)があり、開拓者がこの地を通って西へ西へと進んで行ったものと思われます。「ホームルール」は州法に抵触せず、州憲法上でも禁止されていない事項であれば、いかなる行為も自治体の主導で為す事が出来るというものであり、地方自治体の自己決定、自己責任の中で行政執行をするものであり、まさに地方分権そのものであります。
次の訪問地は、ロサンゼルスにおいて南加鳥取クラブとの交流、サンフランシスコで鳥取県人会を訪問し交流を図りました。そして最後の研修地はシリコンバレーにあるサニーベール市での「執行評価」についてであります。
サニーベール市は住民を顧客として捉え、付加価値の高いサービスを効率よく提供させていただいているとの考え方、姿勢を基本とし、政策主導と行政執行を担当する各職員が行う評価と、市民による評価(市民満足度調査)がリンクしており、総合的な評価システムを実施していました。評価結果は各管理職が市議会及び市長に報告するとともに、市民への調査が行われ、その評価結果はボーナス査定にも影響するという事でした。
これらの視察を通して国毎にまた、それぞれの自治体毎に画一的ではなく、多様な行政手法があるという事を見聞し、アメリカという国はインディペンデント、フロンティアスピリッツ、そしてアメリカンドリームのある国であり、懐の深い面白い国だなと思いました。また、両市とも議員は無報酬で、議員の中から市長が互選され、毎週夜一度集まり、市の方針を協議決定し、執行はシティマネージャーに責任を持って実施させるという事であり、日本とは随分違うなと思った所であります。
私はその当時、議会の副議長として視察に参加させていただきました。1年後、町長選挙に立候補し2期目を終了しようとしていますが、アメリカで体験した視察研修は私の町政執行の中で大いに参考になっています。「タウンミーティング」についてはアメリカとは若干違いますが、住民の意見を直接反映するという意味で、町内全集落をそれぞれの政策説明、地域懇談会を開催しておりますし、住民との協働という事で計画段階から参画していただいております。また「ホームルール」については、県内で一番初めに自治基本条例を制定し、住民自治の観点から自己決定・自己責任の中で町づくりを進めています。「執行評価」については、マニフェストを作成し執行しておりますが、まだこれからの段階ですので、住民が満足するよう評価制度を更に検討して参りたいと考えております。
このアメリカでの経験は私の行政手法の原点にもなっており、ビッグなドリームを持って頑張って参りたいと考えております。