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生命地域宣言

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年7月27日

島根県飯南町長 山碕 英樹


飯南町は、島根県中南部、広島県との県境、中国山地の脊梁部に位置する町です。周囲は1,000メートル前後の山々に囲まれ、平坦地の標高が450メートルの県下でも代表的な高原地帯で人口約5,800人の町です。
大国主命が琴を弾いたと伝えられる琴引山(ことびきやま)は、出雲風土記にその名をとどめ、悠久の歴史をうかがい知ることができます。
本町は平成17年1月に2つの町が合併し、「小さな田舎からの生命地域宣言」を基本理念として誕生しました。
この「生命地域」という理念は、本町にある、「島根県中山間地域研究センター」からいただきました。この研究センターは、今から10年前、全国で初めて、中山間地の持続的な地域社会の形成を支援するシンクタンクとして島根県により設置さ れ、今では数々の研究成果をあげています。

そのオープンに当たり「生命地域宣言」がなされました。それは、「中山間地域はいのちを育むみなもとの地、環境の世紀における先進空間であり、中山間地域の再生を宣言する。(要約)」というものです。
私たちは今こそ、正に、中山間地域に住む事に、自信と誇り、そして責任を持たなくてはならないと思います。
わが町では、その意思を表す取り組みとして、「森林を活かした町づくり」と「環境に優しい町づくり」を進めようとしています。
本町の90%を占める森林は、多分にもれず、なかなか手入れをすることができず、私たちの普段の生活にあまり関わりが無くなってきています。しかし、私たちの先人は、森から、材はもとよりですが、山菜、木の実に食を求め、燃料を調達し、薬木、薬草で病気を治してきました。

こうした先人の森林との関わり を、現代に再び活かすことが求められていると思うのです。そして、それは、木質バイオマスや森林体験事業、機能性食品という形でいろいろな取り組みがなされています。
本町では、先ず、みんなが森林に目を向け、町民はもとより、都市住民の皆さんにも、森林の持つ力を享受していただこうと、「森林セラピー」に取り組んでいます。これは、生理実験等により「癒し」効果が高いと検証がなされた森が認定されるものであり、現在35カ所が認定されています。
今後、安定した事業として展開し、また、より多くの都市部の皆さんに利用いただくためのいろいろな仕組みをつくりたいと考えています。そして、全国の仲間の皆さんと手をつないで、多くの国民の皆さんの健康づくりに貢献していきたいと思っています。
また、清らかな水を生み出し、二酸化炭素を吸収する上からも、適切な森林整備は欠かせません。そして、そこには若者の雇用の場が生まれます。現在新たな税の導入に向け運動がなされていますが、是非とも安定して持続的な森林整備が行えるシステムができることを期待しています。
上流、中流、下流が一体になって、我が国の貴重な財産である森林を生かしていきたいものです。環境問題として、二酸化炭素の排出量削減が大きな課題となっています。
そうした中、本町では、特産の「やまといも」に二酸化炭素の排出量表示を始めました。100グラム当たり「16.0g」の排出です。都市部に出荷すれば、更に輸送時の排出量が加わります。
これは生産者、消費者みんなの環境意識を高めようとするものです が、私たち生産者は更にこの量を削減するため、これまでにも増して化学肥料や農薬の使用を控え、無駄な包装をしないなどの努力をしていこうと思います。このことは、安全な農産物の生産とコスト削減にもつながります。また、消費者の皆さんには、地産地消や国内産の利用にさらに理解を深めていただくことになると思っています。
 
今後、表示品目を増やしていきたいと考えており、こうしたことに取り組みながら、環境に優しい町づくりを進めようと思っております。
わが町を「生命地域」として再生するために、一歩々々確かな歩みができるよう努力をしていこうと思っています。