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 環境3点セットによるまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年3月9日

山口県平生町長  山田 健一


1、風をつかめ!
今、私が執務をしている町長室の窓から周防富士と言われる箕山の稜線に沿って、風力発電用の風車が6基見えます。(平成16年度に1基、平成20年度に6基建設され、計7基になりましたが、残念ながら1基は山の向こう側にあるため見えません。)
昨年の「平生町の重大ニュース」を考えてみますと、いの一番にこの風力発電所の完成が挙がります。町民の方々の関心も高く、子どもたちにも人気があります。
過日の青少年健全育成大会で小・中・高校生による「少年の主張」コンクールの優秀作品が発表されましたが、その作品において、多くの児童・生徒がこの風車に言及し、町のシンボルになった喜びや誇りに感じていることを熱く語ってくれました。
この風力発電は新エネルギーの主力のひとつとして、世界的に注目されています。思えば風況調査の開始から今春の本格稼働まで、約10年、ようやく7基が揃うことになり、子どもたちが環境保全の大切さを学ぶ上で、格好の教材を与えることができたと思うと感慨ひとしおのものがあります。
2、生きた化石“カブトガニ”を救え!
カブトガニは、平生湾にも数多く生息していましたが、昭和40年代から湾内の環境の変化などで、急激に減少し、今ではわずかに繁殖が確認されているだけです。全国的にも海岸の埋立工事などで干潟(ひがた:カブトガニの産卵場所)が減少しており、絶滅危惧種に指定されています。そこで平生町では、産卵場所の整備や卵の人工孵化、幼生の放流などで保護活動を行っています。
身近なところで絶滅の危機に瀕しているカブトガニの存在をPRすることで、地球温暖化防止対策に対する住民の意識啓発活動のシンボルとして役立てていこうと考えています。
3、地モノが一番!
昨年の“中国産冷凍ギョーザ事件”に背筋が凍る思いをしたのは私だけではないでしょう。この事件をはじめ、産地偽装など今も絶えない食の安全を脅かす問題は、改めてわが国の食糧自給率が39%という危うい現実を浮き彫りにしています。かつては8割以上あったわが国の自給率。それが今や私たちの胃袋の大半を外国にゆだねているのですから、まさに憂慮すべき事態です。
 
こうした状況を背景に平生町が昭和50年代から“有機農業”の先駆けとして取り組んできた環境保全型農業が脚光を浴びています。「身土不二」という言葉があるように、食べ物はその土地の気候・風土・文化と深く結びついていると信じて、農薬や化学肥料をなるべく使わず生産した町内産農産物を皆さんに食べていただこうと平成10年「ひらお特産品センター」が建設されました。  
このひらお特産品センターを拠点として、生産者と消費者で相互に顔が見える“地産地消”運動が大きく前進したと自負しています。
4、最後に・・・
 
こうして環境問題に思いを馳せてみますと、地球環境にダメージを与えているのは、私たち一人ひとりの生活態様であり、地域や企業の経済活動であることが改めてわかります。  
もちろん京都議定書のように、各国のトップが世界的な視野に立った上で、今後世界が進むべき道を国家レベルで示す必要があります。しかしながら、その道に沿って具体的な行動を起こせるのは、小さな個人、大きくても地域・市町村レベルではないでしょうか。国や県から与えられた方針に追従するのではなく、地域の実情に最も精通している我々がその地域に合わせた取組みを自発的に、積極的に、地道に進め、子や孫に美しいふるさとを引き継ぐことが、今の時代を生きる上での最低限の責任だと強く感じています。