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 歴史と文化の薫るまち

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年12月22日

静岡県松崎町長  深澤 進


「なまこ壁と夢の蔵づくり」
我が町は、静岡県伊豆半島西南にあり駿河湾に面しているため、リアス式海岸で風光明媚、気候温暖であるが、冬期は季節風の西風が強く吹く地域でもある。季節風の吹くことから、火災予防や保温、防湿などの目的で、商家、蚕産業を営んだ農家に住宅及び蔵をなまこ壁による土蔵造りにしたものが多い。建物は外壁に四角い平瓦を貼りつけ、“めじ”と呼ばれるその継ぎ目に漆喰をかまぼこ型に盛り上げて塗っていくものである。漆喰は、海藻を煮つめて糊状にしたものと、石灰・麻の繊維を混ぜ合わせたもの。
現在の住宅は近代建築で、昔ながらの日本建築が少なくなり、左官職人の行う仕事が少なくなっていることから、町では民家のブロック積の塀をなまこ壁で仕上げることにより、なまこ壁づくりの技術を伝承していこうという事業に対し補助をしている。その事業を続けている中で、左官職人以外のボランティアも加わり“松崎蔵つくり隊”というグループもでき、昨年は壊れかけていた古民家のなまこ壁の修復も行い、徐々に参加者も増えている。
こんな時、我が町は静岡県内で平成21年10月下旬開催される国民文化祭に「鏝と漆喰のアート」というテーマで参加しようということになり、先の“松崎蔵つくり隊”が3坪位のなまこ壁の土蔵を「松崎夢の蔵」として昔ながらの工法で、基礎から自分たちの手で造ることを認めてほしいとの要望があり、それを許可した。設計から資材の手配と大変な様子で、特に主材料の土集めが大変だという。国民文化祭に盛大な竣工式が出来ることを楽しみにしている。この土蔵は、「伊豆の長八美術館」という我が町出身の左官職人で鏝絵名人と言われている入江長八の作品展示場敷地内の一画を占め、全国でも珍しい左官の魂といえる「鏝塚」と併せて、充実した観光ポイントとなっていくことに期待を寄せている。
「郷土の偉人」
また、町の中央を流れる那賀川沿いの下田松崎街道には、6キロメートルにわたり1,200本もの桜並木があり、花の季節は大いに賑わう。その桜並木街道に、道の駅「花の三聖苑」がある。この地域には静かな佇まいの大沢温泉郷があり、この地にゆかりの出身者に江戸末期から明治の初めにかけ活躍した、土屋三余、依田佐二平、依田勉三の三偉人が在る。村の青年に学業を教えた土屋三余、中等学校教育の必要性を説き旧制中学校を開設した依田佐二平、北海道帯広開拓の祖依田勉三は、北海道は元より我が町の人たちにも尊敬されている。
町民の間ではこの三偉人を三聖と呼んで慣れ親しんでいることから、昭和63年に「三聖苑」命名した施設として、地域経済の活性化を目的に観光客の休息場所となる物産販売所、花時計、駐車場等を整備した。後年、道の駅「花の三聖苑」と名称を改め、現在も軽食喫茶等の提供をしている。そしてここには、道の駅としては全国でも珍しい湯治場的な温泉浴場「かじかの湯」を併設してあるが、この温泉、誰が名付けたものか“美人の湯”とか、肌がなめらかになって大変評判が良く、観光客や地元の人たちで年間約3万人の利用がある。
このような歴史と文化の薫る松崎らしい観光資源を大切にしていき、平成21春には当町に新港湾が完成する見通しであるため、伊豆半島の海の玄関口として伊豆への観光客を招き入れたいと夢を描いている。そんな観光振興策を持って、平成22年3月の南伊豆地区1市3町(下田市、河津町、南伊豆町、松崎町)合併協議を重ねている。