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 テクノのまちあれやこれや

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年9月15日

長野県坂城町長  中沢 一


四方が緑の山々、中央に千曲川が流れる自然豊かな坂城町は、長野広域と上田広域の結節点に位置し、高い技術力と創造性に富み、テクノのまちとして知られています。
戦国時代は、北信濃の雄・村上義清が活躍し、江戸時代には、幕府直轄の天領、北国街道の宿場町として栄え、独自の文化が今に伝えられています。
戦後は県下有数の工業技術集積地として名を馳せており、人口1,7000人足らず、製造業が約300社、なぜこの地に工業技術集積がと常に問われるところです。戦中の疎開工場に端を発し、旺盛な自立心、技術を磨き、自ら独立する企業家精神と合わせ、企業相互の協力が大きな役割を果たしています。
新産業の創出と産学官連携
自然と人と産業の共生する「ものづくりとやすらぎのまち」が町の基本的テーマです。工業技術集積を高め、その果実を福祉・教育・生活文化に活かしております。
行政、商工会、坂城テクノセンター、テクノハート坂城協同組合が相まって、工業立地と技術の向上、新産業の創出に工夫を凝らし、さらに今日的課題に対応すべく産学官の連携に取り組んでいます。
上海の復旦大学日本研究センターとは十数年前から日本の企業下請構造調査に係わり、2000年には地方自治体として唯一産業振興等の交流促進議定書を締結し、企業の相互訪問やシンポジウムを開き、企業の成長モデルなどを模索しています。今年は上海嘉定区の実験小学校と町内3小学校相互のホームステイも実施します。
信州大学繊維学部と産業連携の協働に関する協定、長野大学とは実践モデル都市に関する協定、創造学園大学や埼玉工業大学との連携も深めています。更に国の産業技術総合研究所の支援を得て、ものづくりコンソーシアムを展開し、新分野の発掘に挑戦しています。世界的数学者広中平祐先生の算数・数学大好き授業は5年目を迎え、児童・生徒たちの関心が高まりつつあります。
町の誇りは村上義清と宮入刀匠
NHK大河ドラマ「風林火山」で武田信玄を2度も破った武将、村上義清が甦ってきました。町の合併50周年記念フォーラムでは信州大学の笹本先生のご指導のもと、信濃村上氏ゆかりの地域との意見交換会や講演会を開き、その記録を「村上義清と信濃村上氏」「村上義清とその一族」が信毎書籍から発刊され大好評です。例年四国今治市で開催される村上水軍レースに町民有志が3年連続出場し、古き交流に想いを馳せています。
人間国宝宮入行平刀匠は郷土の誉れです。刀匠は作刀の傍ら多くの弟子を育て、現在全国で活躍し、そのネットワークは貴重な匠の存在となっています。人間国宝宮入行平を讃え、世界に誇る日本刀を展示する「鉄の展示館」には、宮入刀匠をはじめ宮入一門の作品、寄贈された長船長光の太刀、赤羽刀など数々の名刀が陳列されています。昨今、刀剣を寄贈される方も増え、管理運営の責任の重さを感じます。
二つの全国サミットで発信
このたび、坂城町花卉栽培の歩みが刊行されました。全国切花大会が開かれた実績があり、戦後花づくりで苦労された数十人の汗の記録でもあります。
そして、幾星霜、千曲川ばら公園には約200種類、1,500株のばらが鮮やかな色彩と芳醇の香りを漂わせ人気を集めています。ボランティアの薔薇人の会と企業オーナーがその管理や技術指導を担っており特質すべきことでしょう。学校・公共機関・国道沿いのばら街道等への植栽、小学校入学時のばらの苗木の贈呈など、ばら栽培の輪が広がっています。来年6月5日には全国ばら制定都市会議(バラサミット)が当地で開かれます。
りんご、ぶどうに加えて伝承野菜ねずみ大根も登場、おしぼりうどん、ねずみ大根焼酎、おやきなど新鮮な味覚が人気です。来年秋には辛味大根全国サミットを計画中です。いで湯の里、温泉と景観、ゆったりとした雰囲気が自慢の「びんぐし湯さん館」には年間30万人が訪れ、新たな賑わいが生まれています。
平成の大合併のなか、自律のまちを選択した坂城町。先人の築いた潜在力を生かし、知恵と工夫で常に発信、飛躍することを願ってやみません。