ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村長随想 >  大学がきた

 大学がきた

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年5月19日

大学がきた

愛媛県愛南町長 谷口 長治



四月二日、本町の西海支所に於いて、愛媛大学南予水産研究センターの開所式が行われた。因みに、伊予の国愛媛県はその地理的状況から東予、中予、南予と三つに分けて呼び慣らわされており、わが愛南町は県の最南端に位置している。「南予」研究センターたる由縁である。

センターは、生命、環境、社会に分かれた三つの科学研究部門からなり、その下に九つの研究分野がある。常駐の二名を含む二十六名の教授、準教授が研究活動や二十名近い学生の指導に当たる。

期待される成果としては、まず本研究センターでの研究活動により、本町をはじめとする南予地域が水産業に関して大学に求めるニーズと大学が持つ水産業振興に役立つシーズが明らかになる。これによって、より有意義な研究の実践が可能となる。さらに地元漁業者、漁協職員、愛南町職員等の中で、水産振興に関係する研究を遂行しようという意欲ある者で組織する「地域特別研究員制度」により、意識が高く若い地域研究者が育成され、「体力のある養殖産業」の実現が可能となる。これらは必然的に地域水産業の後継者の養成に貢献することになる。

又、当センターのメンバーを中心に、地域と協力して「ぎょしょく教育」及び「ブルーツーリズム」に関するNPO法人を数年以内に立ち上げ、地域の活性化に協力することも計画されている。 

何故「魚食」でなくて「ぎょしょく」なのかというと、センターの副所長でもある若林教授を中心としたグループは、従来の「魚食」は、単に魚食の普及を目指した者であったが「ぎょしょく」はこれを魚触、魚色、魚職、魚殖、魚飾、魚食等に表現することにより、魚の生産から消費、さらには生活文化まで含む幅広い内容を持たせ、子供達の五感を通して、魚に関する全ての事柄を体系的で、立体的に理解させようという試みを数年前から実践し、大きな成果を挙げ高い評価を受けている。これが「魚食」でなく「ぎょしょく」の背景であり、本町は「ぎょしょく教育」発祥の地なのである。

さて、水産県愛媛の一員である本町は、平成十六年十月の合併による誕生以来、農林業、水産業の振興を町の最重要課題の一つとして取組んできたが、中でも水産業の生産額二百二十億円は農業生産額の約十倍であり、総生産量は県生産量の三割強に達する。(平成十七年)従って爾来、国や県の指導も戴きながら水産物の付加価値を高めるべく、「愛南ブランド」の創出を目指して様々な施策を試みて来た。

ジャパンインターナショナルシーフードショーへの参加、松山市のデパートの協力を得ての「愛いっぱい産直市」「愛南大漁まつり」の開催、東京の居酒屋チェーンでのイベント、県内食品大手での研修会等々。

いろいろやっているうちに次第に手応えを感じはじめ、関係者一同、「自分たちは売れる商品を持っているぞ」という自信らしきものも芽生えてきた矢先にこの研究センターの開設となった。本町にとっては願ってもない態勢が整ったと思う。

今後取組まねばならない新養殖魚種の開発、養殖餌料の研究、海の環境改善、水揚げされた魚の衛生管理、そして漁村の活性化、これらの諸問題の解決に本研究センターの存在が大きな力となってくれる日が来ることは間違いない。
 
又、当地域全体の活性化に対する大学側の熱意や意欲は旺盛であり、これに十分に応えていけるかどうかは、我々受け入れ側の意欲と姿勢にかかっていると思う。
 
大学を通じて全国を結ぶネットワークは、鉄道も高速道路も無い地域に一足先に開通した知的ハイウェイである。これから何を得るのか、何を発信するのか正念場を迎えた思いがする。「地域に大学がくれば地域はこんなに変わる。」是非、これを本町で実証したいと思っている。