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 ゴールのないまちづくりの実験

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年3月3日

鹿児島県菱刈町長  神園 勝喜


菱刈町は鹿児島県の北部に位置し、北は熊本県人吉市、東は宮崎県えびの市に接する県境にあり人口1万人、面積100平方キロ、うち水田1,500ヘクタール、畑500ヘクタール、山林700ヘクタールの中山間地域です。
鹿児島でありながら盆地であるがゆえ、冬場の最低気温はマイナス7、8度にもなり、鹿児島の北海道と呼ばれています。しかし、この気候の寒暖の差を生かして生産された米は美味しい「伊佐米」として市場に出回り、全国で開催される米サミットでも各種の賞を頂いています。
わが町の自慢は、なんと言っても現在国内で採鉱している金のほぼ100%を採掘している日本一の金鉱山があることです。昭和56年に金脈発見、60年から出鉱、すでに23年採掘を続けています。その間約140tもの金鉱石を採掘、あの有名な佐渡金山が380年で達成した採掘量をわずか11年で達成した化け物みたいな金山だと評価され、今現在でも150tの埋蔵量が確認されており、まだまだこれからが楽しみな山です。有名人では画家でありテレビでも活躍している俳優、榎木孝明氏の出身地でもあります。
こんな町ですが、今年11月1日には隣のまち大口市と合併して伊佐市になります。
これまでの、本町のまちづくりと思いを私なりに遊び心をもって振り返ってみたいと思います。昭和50年代優れたリーダーの下、まちづくりの呼び名を「農村振興運動」と名づけ、話し合い活動により課題を見つけ、その課題を解決する為に、あらゆる事業を導入し課題の解決を図りました。 
その課題を整理したものが「菱町むらづくり方策」であり、30年経過した今も毎年更新され、この方策に基づいたむらづくりを進めています。
その結果、土地基盤整備、カントリーエレベーターなどの施設整備、農村公園や農業集落排水施設など環境整備も県内ではいち早く整備されました。特産品として、金山白ネギや南瓜などありますが、黒豚味噌や自然署も評価が高く、町内にある農産物直販所は連日賑わっています。又、町内には天然温泉が数ヶ所ありますが、菱刈鉱山からでる温泉は黄金風呂として喜ばれています。 
まちづくりをリードするのはパロディ王国「ひしかりガラッパ王国」であります。遊び心を持った異業種・異年齢集団で、NPO法人にまで成長しました。青少年育成を目的とした「子ども自然体験村」の開校。海の体験の少ない町の子供たちを奄美の島で体験させる「ガラッパ海の学校」。新潟県で雪国の体験をさせる「ガラッパ雪の学校」。川をいかしたカヌー・ドラゴンボートなど川遊びの達人養成。イベント企画運営など活動は幅広くユニークです。
 川は洪水を起こすと厄介なものでありますが、普段は遊び心で付き合いすると面白いです。泳ぐ・釣る・漕ぐ・見る・カッパも住んでいる・・・。青少年育成は勿論、町の活性化には欠かせません。子供から大人まで喜びます。
 田舎は最高。スポーツ少年団に代わり農業少年団。緑の少年団。過疎だから汚染されていない自然環境が残っており、高齢化だから高齢者の知恵・知識・体験を学ぶ機会があります。生かせば面白い。これから、Iターン・Uターン・グリーンツーリズム・都市と農村交流など盛んになるでしょう。いよいよ田舎が面白くなってきました。ゴールのないまちづくりも面白くなりそうです。