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 住民協働のまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年1月21日

青森県町村会長・南部町長  工藤 祐直


町村合併による南部町が誕生して二年が経ちました。農業を基幹産業とする町では、数多くの果物を収穫することができます。私は町のPRをするとき「バナナとパイナップルとみかん以外の果物であれば、全てとれる町です。うそだと思ったら来てください。必ず何かの果物が食べられますから。」と説明しています。実際、南国でしかとれない果物以外であれば、口にすることができるのです。
フルーツ王国の当町では、サクランボやリンゴ、桃、梨など果物の収穫体験や農作業を体験できる通年農業観光に取り組んでいます。もちろん、行政の力だけで農業観光はできないため、町民と協働して地域を生かしたまちづくりを進めています。
私は町職員時代から、まちづくりは行政と住民の協働で行わなければならないと感じていました。農林課に勤務していたときのこと。農家の人と、ヨーロッパで農家民泊を体験しながらグリーン・ツーリズムについて学んだことがあります。帰国してしばらくした後、彼らにもう一度海外で研修したいという気持ちが目覚めました。自分達で果物や野菜を売って旅費を貯め、三年後に再び海外での研修をすることができました。
そのメンバーが、研修の成果を生かし、現在も町の農業観光を含むグリーン・ツーリズム事業に一生懸命取り組み、町を支えてくれています。
通年農業観光は、町村合併前の名川町時代、平成十四年の東北新幹線八戸駅開業に向けて始めたものです。豊富な果物を生かした取り組みを開業前に行いたい。開業してからでは後手を踏む。しかし、準備を考えると、開業から一年遅れてのスタートになるかもしれない。何とかならないかと、ヨーロッパ研修に行ったメンバーに相談したところ「町長、どうせ来年やるんだったら、今年からやるべ。」と、私に勇気をくれる発言をいただきました。「本当にいいのか。」と念を押すと「今年失敗しても、来年プラスになるようにすればいい。」と、メンバーは前向きな姿勢で取り組んでくれました。本当にありがたいと思ったものです。
町の事業に限らず、悪い評判はすぐ広がりますが、良い評判はなかなか広がらないものです。しかし、一人でも多くの町民が企画立案から事業に参画すると、良い評判をPRしてくれます。これを意図的に行ったのが、中学校の統合問題です。
名川町時代、三つの中学校を統合して、新しい中学校を建設するときのこと。約百人の町民を対象に、統合中学校推進協議会及び建設部会や学校運営部会などの専門部会を組織しました。そこでは、町民ホールの併設、図書室や体育館の住民開放など、町民の思いを学校づくりに反映させました。 
学校は地域に密着したものであるため、中学校の統合に反対の声もあったのですが、部会に携わっていただいた町民のPRによって、統合を理解していただくこともできました。
ちなみに、新設した名川中学校は、平成十八年度公立学校優良施設表彰事業で、文部科学大臣奨励賞を受賞。町民主体の参加型プロセスによって進められたことを評価いただいたことがうれしく、関係者からも建設に携われてよかったという声が上がっています。
町をあげて取り組んでいる達者村事業。昨年二月に発行された「町村週報二五八九号」で紹介させていただく機会がありましたので、詳しくは省略しますが、農業観光等で町を訪れる方々との交流を通じて、我々町民も達者になろうと合併一年前に開村。現在は、合併した他の町村の住民も、運営に携わる委員として迎え、さっそく農家民泊の受入れや農業観光など、まちづくりに参画していただいています。
それぞれ五十年の歴史を持つ三町村が合併しました。町の一体感が生まれるには、時間を要するものもあります。しかし、住民と協働によるまちづくりによって、少しでも早く町の一体感醸成につながれば、と願わずにいられません。