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 利尻昆布は南へ人は北の島へ

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年11月5日

利尻昆布は南へ人は北の島へ

北海道利尻町長  田島 順逸


南下する利尻昆布

利尻昆布を産する利尻町は日本海を北に上る北の海の道の北端にある利尻島の西側に位置する。

江戸時代に開かれた利尻場所は鰊・鱈・煎海鼠(いりこ)・昆布などを豊富に産していた。それらは北前船で日本各地に運ばれた。なかでも煎海鼠は長崎から俵物として中国に輸出されていた。北海道で生産される昆布は真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布などがあるが、利尻・礼文両島と稚内が産地の利尻昆布は主に関西で消費され、食文化をつくりあげてきた。

世界に誇れる利尻昆布の旨み

だし昆布として最高だといわれている利尻昆布。透き通ったくせのないだしがとれるからだ。食にこだわる京都の高級料亭では利尻昆布が欠かせないといわれ、さらに湯豆腐、千枚漬けにも利尻昆布が事欠くことなく使われている。利尻昆布の素材の持ち味が活かされている。利尻昆布は7月中旬から漁が始まる。海が凪て晴れて太陽の陽ざしが強い日に利尻昆布を採る旗が揚がる。漁師は利尻昆布がたくさん生育しているところに集まり、旗が揚がると捻りほこを海中に入れて岩場に根づいている昆布を巻き付けねじり採る。朝早く天日に干され夕方に集められる。昆布は乾燥が命。等級別に分けて9月中旬以降の製品検査に出すまで湿気ないように気配りして保管する。旬な昆布は磯の香りがするが、乾燥して寝かせてしっかり保存するならば、コクがあって透き通っただしが出る。10年寝かせても大丈夫という。世界に誇れる利尻昆布の旨みは昆布の底力である。

利尻昆布旨みの底力は、豊かなな栄養を蓄えている海の森で育むからだ。利尻島を取り巻く海の森には日本海を北上する対馬暖流が豊富な栄養素を運んでくる。しかしそれ以上に、利尻島の中央にそびえ立つ利尻山から海に流れ込む水が島のたくさんの栄養素を運んで豊かな海をつくるのだろう。

いつも海で漁師が利尻昆布を採っているのを見ると、その恵みをもたらす利尻山を振り返ってしまう。それはこれからも豊かな海のために豊富な栄養素を運んでほしいとの願いを込めてだ。

人は北の島へ

かつては鰊がたくさん獲れていたころは青森県などから、鱈漁は富山県などから中心に多くの人たちが利尻島に渡ってきた。鰊や鱈が獲れなくなってからは島の人たちが本州各地に出稼ぎに行った。

そうした中、日本列島の北の端の利尻・礼文の2つの島が知られるようになって多くの人たちが渡ってくるようになった。利尻=利尻山・高山植物・利尻昆布などが身近に思われるようになった。利尻島に行ったからにはさらに、糖尿病、高血圧など生活習慣病の予防にも効果があるといわれている昆布をお土産に買わなければならないので土産店が賑やかとなる。

日本の伝統的な食材、利尻昆布を産する北の島に魅了されて渡ってくる人たち。島で昆布を採る人たち。昆布が豊かに育つように海・山のあり方を考える人たち。近年は利尻昆布の増産を目指して養殖昆布も盛んに行われているが利尻昆布をめぐる人びとが幸せであることを願って、昆布の旨みを出す利尻昆布の底力を島の内・外の人たちとともに引き出すことができればと、毎日、海・山を見ながら考えている。