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 水と緑と人がきらめく「王寺町」

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年10月22日

奈良県王寺町長  植田 忠行


奈良盆地の西部に位置する、豊かな自然環境に恵まれた王寺町。
町の北端には大和川、東部にはその支流の葛下川が流れ、町の中央には緑が映える片岡山、西南部には町を一望できる明神山。
太古の昔から王寺町を見守ってきた山や川。人々は、日々移ろいを見せる自然の美しさに目を向け、耳を傾けながら、また自らも自然の一部として、おおらかでやさしい営みを永永と繰り返してきた。
王寺町周辺は飛鳥時代より大和川による水路が発達し、歴史的にも重要な位置を占めていた。この大和川は、奈良盆地内を流れる川水を次々と集め、奈良盆地最下流地の王寺町から亀の瀬の渓谷を流れ、大阪府堺市で大阪湾に注いでいる。大和川は、四方を山に囲まれた奈良盆地から大坂(現在の大阪)方面へ抜ける唯一の水路として、江戸時代の18世紀頃には、大坂城下町の市場と大和国を結びつける重要な荷物流通路として大いに利用されていた。
大坂から大和へは主に塩や肥料など、大和から大坂へは米や農作物などが輸送されており、藤井村(現王寺町藤井)の藤井問屋は、この大和川水運による物資の荷継問屋としてにぎわっていた。王寺町は、この大和川や緑豊かな自然環境に抱かれながら、商都大阪から鉄道で約20分という恵まれた立地条件の下、大阪近郊のベッドタウンとして発展してきた。
私は14年前、町長に就任するとき、王寺町に生まれ育った住民と、新しく移り住まれた住民が、ふれあいと友情を深め、目的を1つに共生感が芽生えるまちづくりを町政の礎とした。特に、王寺町を心から愛する「郷土愛」と「近隣愛」を持っていただける、そんなまちづくりを決意したのである。
それとともに、歴史豊かな大和川の清流を取り戻し、豊かな緑とともに、美しい自然環境を未来の子どもたちに引き継いで行きたい。そんな思いから、川の「水」、山の「緑」を大切にしながら、その恵まれた自然を媒体として、「自然とのふれあい」「人とのふれあい」「心のうるおい」を重視したまちづくりを進めてきた。 
水と緑をきめ細かく生活の中に取り込み、自然と調和したまちづくり。
就任以来進めてきた「水と緑のまちづくり」である。その1つは、山々を背景に、緑の拠点として公園緑地などの修景緑化、レクリエーションやウォーキング、ジョギングなどが楽しめる親水性のある川づくりなど、住民同士がふれあい、交流を図るコミュニケーションの場としてのハード整備を行った。
2つ目は何よりも、“自分たちの町は自分たちで美しくしよう”と、住民の温かい心と理解によって支えられている「水と緑の町づくり町民運動」。
河川や道路、公園などの清掃活動を行うボランティア活動「CCC活動(クリエイト・クリーン・サークル)」は、子どもから高齢者まで80団体、4,300人を超える登録があり、毎月自主的に活動されている。
また、年4回の町内一斉のクリーンキャンペーン活動は、参加者が毎回4千人を超える町民運動として定着している。水と緑のまちづくりは今年で14年目を迎え、住民との協働のコミュニティづくりとして、ますます輝きを増している。
地域みんなでゴミのないきれいなまちづくりに汗を流してもらうことによって、“ゴミを拾うことより、ゴミを捨てない”、そんな思いを住民皆さんに持っていただけたらと、私は願ってやまない。 そして何よりも、汗を流した活動の後、お茶を飲みながら世代を超えた笑顔の交流が深められている。 私は、その和やかな姿を目にする時、さらにその”和”を広げていただきたいと、心から願っている。
また、これらの活動を中心に、行政のあらゆる場面で、住民とのパートナーシップのまちづくりが着実に浸透しつつあることに心強く感じ、期待するものである。
美しいまちづくりを通じて、「郷土愛」と「近隣愛」を育み、「やっぱりいいな 王寺」と心から思っていただける、“水と緑と人がきらめく王寺町”を築くため、住民とともにたゆまぬ前進を心に誓う日々である。