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 農山村の良さを生かした町づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年9月10日

農山村の良さを生かした町づくり

和歌山県かつらぎ町長  山本 恵章


かつらぎ町は、和歌山県の北東部、高野山の袂にあり、自然豊かな町である。 

わが町の大部分が田、畑、山林という状況で、戦後から昭和40年代前半までは、この地域にはみかんなどのかんきつ類を中心とした果樹園が広がり、今では考えられないような安定した収入があって地域の経済を支えていた。今は落葉果樹が主体となり、柿、桃、梨、ぶどう、キウイフルーツ、りんご、栗、ブルーベリーなど、多種多様なものを生産している。

農業の収入が安定しないことや若者の農業離れもあり就業人口が減少しており、かつては農業と並んで林業も盛んであったが、これも国産材の価格の低迷で山林から収益を得ることが考えられない状態となっている。

若者は、仕事を求め、生活の便利さを求めて大阪や近隣市町へ転出している。

都市には若者を引き寄せる魅力があって、日本全体でそうした流れが起きている。

多くの人々は町の将来を、働く場が少なく、少子高齢化が進み、集落が消滅していくなど大変な状況になると悲観的に考えている。 

確かに人口も減少の一途で大変な状況ではあるが、わが町には生活をする上で都市にはない大きな魅力があって、幸せに人々が暮らせるところと思っている。

私は、人の幸せはその人生を終えようとするときこれまでの営みを振り返って幸せであると感じられることが重要だと思っている。

若者は苦労をしても後にそれをバネにして幸せを得る機会がある。しかし、お年寄りはそれまでいくら幸せを感じて生活していても今幸せを感じられなければ、それまでの幸せを台無しにし、また将来において幸せを得る時間がない。だから私はお年寄りの幸せな笑顔を見られることが、仕事の目標とする大きな部分と考えている。

多くの住民は、自宅近くに自家用野菜を作る畑を持っている。そこでいろんな野菜を作っている。お年寄りが朝早くから畑に出ている姿をよく見る。最近そうして作った野菜類を農産物直販所で販売できるようになってきている。そうしたことに携わるお年寄りの生きいきとした元気な姿に私も元気をもらっている。山林を所有している人は、かつては山の木を切り出し、自宅を建てていた。いまでもいろんなことに使える状況にある。

そうした自給自足的な生活に、都市にはない魅力と所得には現れない豊かさがあると思っている。

また人は田畑、果樹園や渓流、森林に囲まれ、自然を感じ変化に富んだ生活をすることで、ストレスを受けることが少なくなると感じている。そうした環境で生活している人には穏やかで暖かな人が育つように思う。

かつらぎ町は和泉山脈を隔てて大阪府と接する位置にあり、都市から1時間ほどのところにこんな環境があることを知ってほしいと思うし、そこに住んでいる人も良さを再認識する必要がある。

多くの都市が河口に形成されている。川の河口が健全であるためにはその上流を如何に健全に保つかを河口の人々も含めて考える必要があると思っている。

また、生活するために働き手は都市に住まいを求めているが、健康で生きていくためには、米や野菜などを生産している田舎が必要である。

都市と田舎のそれぞれの役割や良さがあって、都市と田舎のバランスがとれている暮らしの必要性をあらためて考え直す必要がある。そうした国の政策を望むとともに、そこに住む人々も忘れているかもしれない農山村の良さを生かした町づくりを考えている。