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 うるるん体験宿泊

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年2月26日

熊本県小国町長  宮崎 暢俊


うるるん体験宿泊に、昨年北九州から3つの中学校、生徒約350人が2泊3日の体験宿泊で小国町を訪れました。受入の民家は約100世帯です。この申し出があったときに、多くの町内外の人たちが、準備期間がないので難しいと言いました。
しかし、心配されたトラブルもなく実施することができました。小国町の長い間のまちづくりの成果だと考えています。特に、町民の人たちと町外の人たちとの交流と、まちづくりの参加を積極的に進めてきたからでしょう。
十年前に開校した『九州ツーリズム大学』もその取り組みです。多くの人たちとの交流の場づくりであり、ツーリズム『新しい旅』の研修の場でもあります。多くの町民が参加して体験していくことにより、いつのまにか意識に変化が生まれました。
ある集落では、農業の中山間地直接支払い制度を活用して、毎年3人の受講生を入学させています。最初はためらっていた受講生も、一緒に学んだり、食べたり、飲んだり、小国のフィールドワークでは案内人となり、いつのまにか新しい体験に馴染み、学友達との交流を楽しんでいます。 
ツーリズム大学で炭焼きの指導をしている町民の家にも生徒が宿泊しました。なにしろ、肥後式炭焼き法を頑固に守り抜いている人ですので、臆することなく振る舞ったことでしょう。生徒は、農作業で怒られたり、礼儀作法を厳しくしつけられたり、子ども達にとっては、大変な驚きであり、また、何か心に感じるものがあったようです。両親と先生からすぐにお礼の言葉が届いたそうです。酪農家に泊まった子ども達は2頭の子牛の出産に立ち会っています。驚きと感動の場面です。2007年度には、8つの中学校、約1,000人の体験宿泊の申込みがきています。なぜでしょう、わずか2泊3日の小国の自然の中での暮らし、農業や林業の体験、家族や町民とのふれあいは、子ども達に何を教えたのでしょうか。
同じく、(財)学びやの里が主催している『おぐに自然学校』があります。小学校入学前の子ども達から6年生が対象で、1泊2日から13泊14日までのさまざまな体験合宿の学校です。短い期間ですが、子ども達には大きな変化が生まれます。特に、積極的に自己主張ができるようになります。みんなで川で遊んだり、森に住み家を作ったり、芋掘り、田植え、稲刈りなどを体験します。水以外は自給自足に近い生活で、「(料理も)作れないなら、食べられない」といたってシンプルです。参加者は、このキャンプ生活から多くのことを感じとります。子どもの人格は自然とのふれあいの中で形成されていくものです。
小国町には小学校が六校、中学校が1校あります。今、小学校を1校に統合する計画を検討しています。急速な少子化の影響で複式学級の小規模な小学校が5校になります。子ども達が健全に育ち、集団生活の中でたくましく、基礎となる国語や算数を身につけていく小学校をめざしています。幸いなことに、町の中心地にある小学校の隣接地に中学校があります。義務教育九年間、小中一貫教育で、子どもの成長に適した柔軟な教育ができます。小中兼務の専門教科教諭が小中の教壇に立つことができます。小国型教育の目標は、ふるさと『おぐに』を愛する、ふるさとの『におい』を忘れない子ども達を育てることです。そして、この目標に向けて、2つの基本方針を立てました。1つは『豊かな環境を活かした人間教育』。もう1つは、この人間教育の上に成り立つ『確かな学力の向上』です。 
郷土が持つ教育力を子ども達に最大限に活用していきます。