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 現代の乱世を生き抜くために

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年2月19日

山梨県町村会長・西桂町長  前田 勝弘


山梨県町村会副会長として、本誌への寄稿に臨もうとしていた矢先に、突然前会長が辞職され、新たに山梨県町村会長に就任することとなりました。まずは、この場をお借りしまして、就任のご挨拶とさせていただきます。
さて、2007年の新春にあたり、1月7日よりNHK大河ドラマ「風林火山」がスタートしました。織田信長、豊臣秀吉と並び称せられる戦国の名将、武田信玄と、信玄を支えた軍師・山本勘助を中心に、明日の見えない乱世の戦国時代に生きる人々の愛と夢の物語として、山梨県民の大いなる期待の中、物語は進んでいくようです。
戦国の乱世、最強軍団と言われた甲州武田軍、その軍旗は古代中国の兵書「孫子軍争編」に基づいた「風林火山」としてあまりにも有名ですが、軍旗「風林火山」とともに、信玄の領国経営の理念として「武田節」の歌詞にもなっている有名な文言があります。
「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、あだは敵なり。」国全体が城であり、人の和こそ、山河の険しさに匹敵するものだと信玄は信じていました。
城という、見かけだけの施設建立に意を注ぐことなく、人心掌握、適材適所の人員配置など、全ての基本を人に着目した信玄の理念は、没後430年余り経過した現在のわが国においてもなお、高い価値と信玄の眼力の強さを語っております。
今日の日本は、世界でも最も急激な少子高齢化・人口減少の状況に直面しており、そのような中にあって、全国ではバブルの時代に湯水の如く公共事業を行い、箱物施設を建造したばかりに、その後、維持管理コストが嵩み、財政再建団体やその予備軍として、極めて劣悪な財政状況を呈している地方自治体も数多くなっております。
そのような地方財政の破綻と、「三位一体改革」の旗印のもとで行われてきた地方への権限移譲によって現実のものとなりつつある地方自治体間の格差は、いずれにしましても、旧来の護送船団方式により形成されてきた「国が何とかしてくれる」という神話が地方の財政規律の緩みに繋がってきた面が否定できません。
今後、経済社会システムの持続性を確保しつつ質の高い生活を実現していくためには、地域の自己決定・自己責任の理念に基づき、行政における「国から地方へ」の分権改革を加速させ、地方公共団体が経済社会全体の中で期待される役割を着実に果たせるような地方自治制度の再設計に取り組むことが不可欠となっております。
先般、公表された「地方分権21世紀ビジョン懇談会報告書」でも、地方が自由と責任に基づいて自立することが可能となるよう、抜本的な地方分権改革が必要であるとの基本的な認識の下、地方公共団体の運営において何よりも住民への行政サービスの提供を継続することが重要であります。その意味においても、十分な情報開示に基づく透明な早期是正措置によって財政危機の深刻化を回避し、再生への道筋を明らかにすることが重要であることなどが指摘されております。
私は平成7年に就任以来、12年にわたって「住民みずからが主体となって福祉・文化・医療・教育・産業・社会基盤とすべての分野で、心の豊かさを実感し、すべてがバランスよく持続的な発展を遂げている社会」、『いきいき西桂』の建設を提唱してまいりました。
今後さらに、地方財政を取り巻く状況が厳しさを増していくことが予想される中にあって、信玄の「人は石垣、人は城」という領国経営戦略に着眼し、住民と協働して町の活性化やさらなる行政改革の実行にまい進していく所存であります。
終わりにあたり、「風林火山」の舞台・山梨は、武田軍団ゆかりの温泉や史跡、美味など魅力がいっぱいです。大河ドラマ関連イベントも多彩に開催される今こそ、ぜひ山梨へお越しください!