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 ITは過疎僻地町村の救世主となりうるのか

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年2月12日

和歌山県北山村長  奥田 貢


IT革命とさわがれ10年近くを経過した今、私達の生活もインターネットを始めとする情報技術の発展をなくして考えられなくなりました。
私の住む北山村においても地域ケーブルテレビネットに100%の家庭が加入し多チャンネルのテレビ受信は勿論のこと、若い人たちはケーブルを利用したインターネットに格安の料金で24時間接続し情報化社会の恩恵に浴しております。かつては日本国内の各地域は勿論のこと、世界各地とは非常に遠い存在でありましたが、今では情報通信を介して地域間の距離というのはあまり感じなくなったと思います。
また、デジタルディバイドと言うことも一時話題となりましたが、最近では中高年の方も携帯電話やパソコンを活用しての情報受発信をするなど情報化社会にとけ込んできており、大きな問題となることはないのではないかと感じております。
北山村は、紀伊半島の東南中央部にあり周囲を奈良県と三重県に囲まれ、和歌山県でありながら和歌山県のどこの市町とも隣接しない全国で唯一の飛び地の村です。
当村は道路事情も悪く、観光や地場産業等の振興には大きなネックとなっております。とりわけ特産物である柑橘類の「じゃばら」の売り上げは低迷をし、「じゃばら事業」を廃止しようという議論まででておりました。
しかし、IT時代の到来を機に、じゃばら販売の成否をインターネット市場の出店に賭てみようと言うことになり、平成12年にインターネットの楽天市場にリスクを覚悟で出店をいたしました。出店して間もなく「じゃばら」が花粉症に効果があるなどの情報がインターネット上に寄せられ、私達はすぐさまインターネットによる1,000人アンケートを実施したところ、50%の人が効果有りとの結果を得て、すぐさまインターネット上で報告するなどITをフルに活用しインターネット上のイベントやPR等を積極的に行ってきました。
その反響と効果は絶大で瞬く間に注文が殺到する状態となりました。現在では平成12年当時の売り上げに比べて10倍の売り上げに伸び、北山村の大きな基幹産業となってきました。 
このようにITの発達は北山村の活性化にとって大きなインパクトを与えました。しかし、いまやどこでもインターネットを活用した取り組みは当たり前のこととなってきました。
北山村について見ますと、インターネットで成功以来数年を経過しましたが、今まで順調に推移してきているものの売り上げ伸びの鈍化がみられるなど、やや閉塞感がでてきていることも事実です。果たしてITが過疎僻地町村の救世主となりうるのか、これからの戦略の在り方次第でその成果に大きな差が生じてくると思います。
このような状況下、北山村においては今の閉塞感を打開すべく、新しいIT活用施策として「ブログポータルサイト」を行政として運営し、観光筏下りや特産物じゃばらの販売促進を図ることは当然として、「バーチャル北山村」を立ち上げることによりバーチャル北山村民(e-住民)制度を創設して各地域における北山村応援団を結成し北山村の活性化を推進したいと考えております。 
また、e-住民の中から実際に北山村に定住される人がでてくる事を期待しています。もちろんのこと、e-住民制度について既に実施されている地域もあることは十分に承知しておりますが、これからの新しい北山村を切り開く施策として行政では初となるブログポータルサイトの運営(e-住民制度を含め)を平成19年度から実施すべく準備を進めているところです。
果たして、ITが過疎僻地町村の救世主となりうるのか、一つの社会実験の意味をも込めて積極的に取り組んで行きたいと考えております。