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 こだわり

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年7月10日

高知県津野町長  明神 健夫


本町は、日本最後の清流「四万十川」源流点の町でありますので、自然環境、景観、清流保全に、こだわった取り組みをしています。
最初の紹介は、以前河川の付け替え工事を行った際に、水面から上に高さ4メートルもある堰堤を設置し、河川に落差を付けたため、鮎などの魚族がここで分断をされ、四万十川には相応しくない堰堤という批判を受けていました。このため、全国では初めて堰堤から上流へ約100メートルにかけて河床に勾配を付けて掘削し、河床には浅瀬と深みを造る工法でこの堰堤を取り壊して、魚族が自由に上流、下流へ行き来ができる河川に、また、自然景観を復元しました。
次に、道路改良工事によって河川幅を狭めた際には、その狭めた分、対岸を掘削して従前 の河川幅を確保しますが、この時、以前は魚族や水生昆虫などの自然環境、景観などを全く考えず、如何に水が下流へ速く流れるかだけを考えて、護岸をブロックやコンクリートで固め、河床は平らにしてきました。
こうして一度壊した河川を、元の環境、景観に近づけるため、護岸には自然石を積んで既設のブロックやコンクリートを覆い、河床は浅瀬と深みを造り、深みには元あったような魚の住める巨石を置く。また、岸辺には砂がたまり、草が生えるように水の流れを遅くする巨石を並べ、水生昆虫が岸へ上がって羽化できるようにするなど、四万十川の自然環境、景観を取り戻す「近自然河川工法」という、こだわった工法で復元をしています。
次に、し尿と生活雑排水の処理方法でありますが、本町は家と家が離れていますので、戸別に合併浄化槽を普及推進しています。浄化槽を製造している会社は、全国に100社以上あると聞いていますが、その殆どの浄化槽の末端放流水の汚れは国の定める20PPMの浄化能力しかありません。日本で一番汚い川の水は20PPMでありますから、このような浄化槽を普及しますと四万十川が清流ではなくなります。本町では、貯留槽の付いている浄化槽で、しかも末端放流水の汚れが10PPM以下の浄化能力を備えたメーカーを何社か指定して設置をしています。即ち、末端放流水の汚れが20PPMという浄化槽には貯留槽が付いていないため、お風呂の水を抜きながら、また、洗濯をしながら排便をしますと、浄化されずにそのままのものが放流されるからであります。貯留槽が付いていれば、お風呂の水も、洗濯水も、し尿も一旦貯留槽にストックされ、24時間をかけてバクテリアが奇麗に浄化するだけの量を順繰り次の槽へ送って行く装置が付いていますから、10PPM以下の奇麗な水となって放流されるわけであります。 
合併浄化槽の設置、管理は、町の整備計画に基づいて国の特定地域生活排水処理事業を導入し、町が事業主体となって「生活環境施設整備特別会計」を設け、設置の設計書作成から入札、完成検査まで全て行っています。そして、設置後は法定検査や年一回の汚泥の抜き取りが義務付けられていますが、この義務を怠りますと、それこそ日本一汚い四万十川になりますので、これらに係る経費を町が個人から徴収し、町が責任を持って実施をし適正な維持管理を行っています。また、末端の放流水には、まだ汚れがありますから直接川や側溝には放流せず、深さ2メートルの井戸管を設置し、その下には栗石を敷き、そこへ放流して地下の数億のバクテリアに浄化させ、どこともなしに四万十川へ戻しています。このように、こだわった合併浄化槽の設置、管理により清流を保全しています。
私達は、長い歴史を通じて四万十川の限りない恩恵を受け、生活を向上させ、私達の生活に安らぎと潤いを与えていただいています。この清流、魚族、景観を保護、保全し次代に引き継いで行くことは、現在に生きる私達の責務であり、これからも「こだわった」取り組みをして行きます。