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 タブーに挑戦、最先端を走りたい 専務・常務の機構改革

印刷用ページを表示する 掲載日:2005年8月8日

タブーに挑戦、最先端を走りたい… 専務・常務の機構改革

愛知県町村会長
西春町長
 上野 政夫

職員に意識改革を説いて19年。何度「意識改革」という呪文を唱えたことか。だが、期待した効果は、なかなか現れない。「言う」ことと「する」ことは全く別なのが公務員の世界だ。総合計画とか地域計画など、計画書には「理想」を書けばよい。計画は「計画」だ、「実現するのは別の問題」という感覚だった。何と、計画とは「計画書」(冊子)のことと思っていた職員もいたのである。

こんな世界での意識改革である。どういう目標を掲げ、どう行動するか、悩んだ末、私は、それを機構改革で実現しようとした。目標を公務員の3悪、「たらい回し」「前例踏襲」「先送り」の追放とし、「グループ制」と「民間経営感覚」を取り入れることにした。3悪追放のために「民間だったら」どうするか・どうなるかと考えさせた。店頭で「たらい回し」していたら、顧客は逃げていく。改革・改善のない「前例踏襲」を続けていたら、ニーズに対応できず、商品は売れなくなる。経営課題を「先送り」していたら、倒産してしまう。と、考えるのである。企業価値の尺度は株主への配当であるが、自治体のそれは、住民の満足度である。満足度は、住民サービスで評価されるから、住民サービスの量と質がまさに自治体の価値となる。といっても、歳入は限られている。限られた財源で、いかに住民の満足度を最大限に上げるかが、トップの手腕である。これは、企業経営と何ら変わることではない。

さて、機構改革である。意識改革が目的だから、部課制はやめ、グループ制にした。役職名は、「専務」「常務」としたから、マスコミはびっくり。コペルニクス的発想に、ある雑誌では、「奇をてらった名前遊びにならないか」とあった。こう書かれると、反発したくなるのが人情だ。取材攻勢に、専務・常務はいやでも自己の職責を自覚した。というより、自覚させられたというのが正しい。

名刺を出せば、まず第一に専務・常務、そして機構改革の話をせざるを得ないからである。まさに説明責任である。ついに職員が、「西春の機構改革は中身が違う」と言い出した。こうなったらしめたもの、年功序列人事の廃止、能力・成績重視の昇格昇級、窓口の整理統合、権限の移譲、異動の通年化にまで進んだ。独自の勤務評定表を開発して、部下だけでなく上司の評定も取り入れ、ボーナスに差をつけた。住民の利便のため、関連サービスはできるだけ1か所にまとめ、たらい回しを返上した。税務や会計で、ごみ袋を売った。職員の配置は専務の権限とし、グループは事務の増減にアメーバのように対応した。

常識の枠にとらわれない自由な発想、こんな改革ができたのも、議会が積極的に評価し、住民がすんなり受け入れてくれたお陰だ。成果は、住民アンケートで検証し、広報に職員通信簿として載せている。全国百数十箇所から視察に見えたが、「ここまでやるか」と仰天して帰られた。ホームページのアクセスは、50倍以上になった。しかし、この改革を採用するには相当の勇気がいるにちがいない。私は、この改革は公務員の常識には外れているかもしれないが、世間の常識には合致していると自負している。地方自治法や地方公務員法の精神も十分生かされていると思う。近年、理念を同じくする市町村が増加し、部分的ではあるが、よく似た施策の採用が続いているのは心強い限りである。

改革には終わりはない。続いて、仕事を「官」から「民」へ移行させるため、「自治経営協働会社」を設立し、住民、NPO、各種団体などに参加を求め、事務の民営化を大胆に進めている。公務の処理に法的なタブーはなくなりつつある。創意工夫で改革・改善できる段階に至った。あとは、公務員の心のタブーを取り除くことである。私は、挑戦者でありたい。あえて、タブーに挑戦し、時代の最先端を走りたいと思う。