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 少子化時代に思うこと

印刷用ページを表示する 掲載日:2004年11月15日

少子化時代に思うこと

福井県大飯町長  時岡 忍

  
昔のことを話すようになると歳を取った証拠だとよくいわれるが、幼少の頃を振り返り、年寄りの愚痴をこぼしてみます。

先日も恒例の戦没者追悼式に招かれ、戦後生まれの人が多くなって、めっきり少なくなった遺族席を前に「追悼のことば」を申し上げました。私は昭和12年生まれの67歳です。小学2年のとき終戦を迎えました。子供のころの記憶は不思議なもので、私の場合、保育所に通って、楽しかったこと、いじめられて悲しかったことなど、の出来事は数多く覚えていて、今でも思い出すと、そのときの光景が走馬灯のように浮かんでくるのですが、なぜか家庭内のことや友達と道端で遊んだことなどは、ほとんど忘れてしまっているのが不思議でなりません。

小学生になると、家の中でのこと、学校での出来事がその時と同じくらいに想い出せる、不思議なものです。私の村は所謂片田舎で、小学校の頃は都会から多くの児童が疎開してきていました。こんな在所でも終戦間近にはしょっちゅう授業中に警戒警報のサイレンが鳴り、その度に机の上を片付けて近くの竹薮に避難したものです。頭の上を飛行機(小さな艦載機だった)が飛んでゆくのだから怖さもありましたが、堅苦しい授業よりも楽しかったと憶えています。機銃掃射には一度だけ遭い青くなっていました。

町は、戦災にもほとんど遭わず、小学校舎も無事のまま終戦を迎えました。物資不足で教科書や消しゴムなどのない学校生活は、諸兄もご承知のとおりでした。まもなく6・3 制の義務教育となり、中学校は小学校舎の教室を間借りしての3年間で、私たちが卒業した年から新しい中学校舎の建設が始まりました。高校・大学も同様で、私たちが卒業するのを待っていたかのように新しい校舎が建てられたのを憶えています。

このことは、国の経済復興のスピードと、団塊の世代の受け入れ準備と、私たちの入学・卒業のサイクルが合致した結果ですが、なんと運の悪い年回りなのだろうと友達とよく話し合ったものでした。このように、あらゆることがアナログであった時代をすごしてきた者から見ていると、保育所、小学、中学と通う孫たちがなんとなくかわいそうになり、又、将来のことが不安になってきます。教育方針一つにしても、詰め込み教育の弊害を見直す必要があると、ゆとりの教育が取り入れられたとたんに、こんどは、学力の低下を招いていると問題になっています。又、教育費の負担をどうするのか、などの問題が財政改革の観点からのみ議論され、私の町も、今まで派遣されてきたスポーツ主事・社会教育主事制度も無くなるようです。この様な改革の進め方に大きな不安を抱くわけです。

私はこの方面の専門知識など持ち合わせてはいないし、大げさなことを申し上げるつもりもありませんが、今の子供たちはかわいそうだと思います。年々進む少子化と最も動物的な行為の子育てにはおよそ不向きな文明社会の中で、若いお父さんお母さんたちは、生きたお手本のないままに、懸命に取り組んでおられます。立派に成長した、又、成長してゆく子供を見たくない人はいないと思います。

冒頭に記した私の記憶を押し売りするつもりはありませんが、子供が成人したとき、肉親以外から、社会から、友達から受けた想い出が、沢山できる社会作りが出来ないものかと思案するものです。

私の町では、町出身の作家、故水上勉先生が創設された文化施設「若洲一滴文庫」が在り、この施設をそっくり町に寄贈を受け、2年程前からNPO「一滴の里」が町の委託を受け、文庫の管理運営にあたっておりますが、その活況ぶりには目を見張るものがあります。

全国からの来館者の増加もさることながら、先生が創立の目的の大きな一つにされていた小中学生への文庫解放の案内(扁額)書「佐分利川の子らへ…」で望まれていたとおり、近郊近在の子供達がよく遊びに訪れている様子が文庫のホームページに毎日写真入りで載る日記「一滴徒然草」に書かれており、町の施策の中で最も成功したものの一つであると考えていますが、義務教育も「画一平等」の殻を脱ぎ捨て、民間委託校を認めるのも、教育改革の突破口として有効ではないかと思います。

米国では、民間企業やNPOが学校の運営を引き受ける制度があり、すでに50万人からの子供達が学んでいると聞いております。限られた財源と知恵と工夫で最大限に活用し、独自の教育を打ち出し、子供達がそれぞれに持っている個性、能力をいっぱい伸ばして希望を持って生きるためのカの基礎を身につけさせるのです。

そんな生き生きした子供達が増えてくれば、子供をほしい人達が増え、少子化にも歯止めがかかるのではないかと考えながら、この様な制度が出来たら、一番先に我が町に取り入れたいと思うこの頃です。