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 自然と共生する村づくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2004年4月19日

自然と共生する村づくり

岡山県富村長 為本 けい治
(けい=ごんべんに恵)


富村は明治22年の町村制施行に伴い富仲間村、富東谷村、富西谷村、大村、楠村の5ケ村が合併して生まれ、平成元年に村制施行100周年を迎えて現在に至る歴史ある村です。

古くは、たたら製鉄と木地製品の製造の地として栄え、その後は木材、和牛、木炭の生産地として発展してきました。

しかし、第二次世界大戦後の高度経済成長に伴い、都市部への人口流出、また少子化の進展により過疎化が進んできました。昭和35年は人口1,924人でしたが、平成16年1月には899人と約半分に減少しています。

村内は山林が95%を占めており、最近では林業が主産業となっております。

このような村でも上水道の完備や、農業集落排水事業の整備、小さな村でもテレビ放送局を持ち、議会の様子や村内での出来事、また農林業関連の情報などの他、生活関連の文字放送、音声告知放送を村内全家庭にお届けいたしております。

本村は木材の村であり、多くの先輩達が大切に育ててきた木材を使い、総合福祉センター、小学校校舎、体育館、温泉交流館などを整備し、木材の温かさをPRすると同時に地産地消に寄与して参りました。この結果、ある程度の生活環境整備は整ってまいりましたが、最近特に感じていることは、地球温暖化のためか、植物の生態系の変化や、河川水の温度の上昇などにより、小動物が種類も数量も少なくなってきていることです。

私達が幼い頃は川に入って魚取りをしたり、田植えの前には水路の手入れなどで水路の水を止めますが、当時は多種多量の水棲生物が見られたものですが、今では河川改修などの濁り水の影響で、このような光景を目にすることは少なくなりつつあります。

村内水域に多数棲息するホタルや水生昆虫類の絶滅が危惧される中、郷土魚類、山陽型スジシマドジョウなど魚や植物をはじめとする富村の誇る豊かな自然、生態系を維持するために、各種の事業を実施しました。

一つは農地の転作と、同時に進む農地の荒廃を何とかくい止め、水田は水田として活用するために、水生植物を植栽しています。この水生植物を植栽することにより、窒素、リンの除去とともに春から秋にかけては色とりどりの花が咲き、植物の観察や水辺とのふれあいの場として楽しんでいただいています。

二つ目は、林業の振興を進めておりますが、人口林率75%を超す木材で、特に力を入れているのは緊急間伐事業などで生まれる小経木を炭にして利用することです。山に放置すると災害時に二次災害を招くおそれがあります。間伐材等を地域振興に利用するため、木炭粉砕施設等を作り、各種の炭製品を販売しております。炭は窒素やリン、さらには臭いや色まで吸着しますし、湿度調整や遠赤外線等も出すと言われており、そこで私の村ではこれら植物と炭等を使って幾つかの事業に取り組んでいます。

総合福祉センターに隣接する「ふるさと公園」内には合併浄化槽からの処理水を地下配管を通じ芝や植物に吸収させ、河川に流さないシステムを、キャンプ場の水洗トイレも同様に、又農業集落排水最終処理場からの処理水についても、多段式接触槽に、木炭、竹等を使用し、窒素、リン、塩素、臭いなど吸着処理し、さらに水生植物に吸収させて放流しています。水性植物の処理池では鯉が元気に泳いでいます。

私達は、豊かな自然と美しい清流に恵まれています。この豊かな恵みを大切にしながら、自然と共生した活力ある村づくりを進めたいと思います。

地域資源や先人の知恵を最大限に生かした、ユニークで個性的な発想に基づき、自然の生態系を調和した産業振興を今後も進めて参りたいと思っています。

私達は日本の風景を守ります。