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 安全・安心を基本とした地域づくりをめざして

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年9月29日

埼玉県大里町長  吉原 文雄

大里町は、埼玉県の北部に位置し、行政面積約15平方キロの田園都市です。都心から60キロ圏内に位置するため、昭和41年に首都近郊整備地帯に指定されました。また、昭和45年には、ほぼ全域が農業振輿地域および市街化調整区域となりました。現在、町の農業は、米、小麦が中心でありますが、花卉、トマト、ブロッコリー、とうもろこしなど多彩な農産物も生産されるようになりました。
 
このようななか町では、昨年度、農産物直売所を建設しました。町内の農家が生産した新鮮で安全な野菜などがこの直売施設で販売されつつあり、今後も、安全で、新鮮な多品目の農産物が町内で生産され、市場だけでなく、直売所でも販売されていくことを期待しています。
また、農産物直売所とともに建設しました農産物加工所では、現在、農家の女性を主とする組合が組織され、田舎饅頭、手打ちうどんなどの生産および販売を展開しています。美しい田園環境は大里町の財産であり、後世に引き継いでいくためにも、元気のある農家を育成していくことは重要であると信じています。
大里町は、前回の国勢調査で人口の増加率が県内5番目という状況にあり、町制施行を望む住民の声を受け、昨年4月、大里村から大里町となりました。
ここ数年、人口は漸増傾向にあり、市街化区域内の町内の工業用地には、5社の企業が操業しております。ゆっくりですが、着実に都市化も進行しています。 
しかし、私は、町政の基本は、人が安全で利便性の高い暮らしやすさの創出であり、地域の特性を活かすとともに、地域の安全性を高めることと考えています。人口は、やがて減少時代を迎えます。住民の高齢化も確実に進みます。避けては通れない流れです。そのようななかで、町行政は、基本構想や総合振興計画に従い総合的な福祉向上に努めていくことはもちろんですが、町の将来を考えると、町の暮らしやすさの中心は、治水対策であり利水対策であると考えております。
大里町は、江戸時代の人為的な河川改修以来常習的な水害地でありました。荒川上流の秩父地方に降った雨は荒川に注ぎこみます。平常時は美しい荒川も、大雨となると一変し、危険な状況にと豹変します。「破堤」という事態も繰り返され、多くの尊い人命や財産が失われました。歴史は、水を治めることは非常に難しく、地形の不利を克服することはむずかしいことを教えてくれます。このような中、私は建設省(現国土交通省)や埼玉県など町内の河川を管轄するセクションとともにできる限りの対策を講ずるべく奔走しました。国、県の関係者のご理解とご努力のお陰で、新たに排水機場と水門が建設でき、既存の排水機場の能力アップも実現しました。さらに、増水すると水を被る橋いわゆる〝冠水橋.も、国、県、地元住民の協力により新しい大橋となり町の経済効果も期待されております。
同時に、水と親しむ空間として町内の中央の堤防添いには、幼児が水遊びをするジャブジャブ池やローラー滑り台、バーベキュー広場などの施設のある公園を整備しました。さらに現在は、高規格堤防(スーパー堤防)を整備中であり、整備後は、堤防敷地に汚泥再生処理のための施設と健康増進のための施設を併設する計画です。また、豊富な地下水を上水の水源とする町の水道事業にも取組んでいます。まず治水、そして利水、さらに水を活かす(活水)これが私の考えです。
わたくしは、何よりも安全な地域づくり、つぎに地域の教育力の充実が、地域づくりの優先順位最上位ではないかと思います。
大里町も人口8,300人余の小規模自治体であり、現在、近隣の1市2町と合併協議会を設置し、特例法期限内の合併を模索しています。今回の合併推進には疑問もありますが合併という変化を活かしたあらたな地域づくりの可能性も期待できます。合併することはリスクもあります。しかし、合併しないことにもリスクがあることは事実です。暮らしやすさを支点として、合併の是非を冷静に考えていきたいと思います。