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 耳かきとマウンテンバイク

印刷用ページを表示する 掲載日:2001年12月17日

埼玉県杉戸町長 小川伊七

杉戸町は、関東平野のほぼ中央部の埼玉県の東部に位置し、東西に約10㎞、南北に約7㎞の広がりを有し、鷲が翼を広げたような形をしています。

東西の両端を江戸川と大落古利根川が流れ、さらに中川・倉松川など多数の中小河川・水路が町内を流下し、豊かな田園風景が広がる田園都市として発展しています。

私は毎朝、トレーニングを兼ねて、出勤前に町内をマウンテンバイクで周っています。この朝のひと時を通して、季節の移り変りを肌で感じながら、新たな発見や町民の素顔に触れることができ、会議での話題も事前に知ることができるなど、心地よい汗とは別のもうひとつの充実感を得ています。マウンテンバイクに乗って町の真中を通っている広域農道を南方に走らせると、今年4月にオープンした「アグリパークゆめすぎと」が見えてきます。思い起こせば、この土地は町の最大の課題でありました。私が町長に出馬を決意したのも、この土地問題やごみ焼却場建設問題を「誰かがやらねば」との思いでした。

就任以前からごみ焼却場建設用地として計画されていたこの土地が、建設凍結に伴い、負の遺産とも言うべき土地となって大きな問題として残っていました。

この土地を21世紀の杉戸町に負の遺産として残したくないという一念の思いで地域の住民と膝を交えて本音で語り合ったことで、今年四月に農業構造改善事業として、農業振興と地域活性化の拠点施設として10haの農業公園「アグリパークゆめすぎと」として花開くことになりました。さらに、この公園は地域交流の場としての「まちの駅」の認定を受けるなど、開園以来予想を大きく上回る多くの方々にご利用いただいております。

この施設が、利用される方にとってふれあいの場、憩いの場、情報交換の場となり、町全体がオアシスとなるようなまちづくりの第一歩としての施設となることを願ってやみません。

さらに愛車のマウンテンバイクを走らせ、町の東側へ進んでいくと、1㎞先から時刻がわかる時計付きの四角い煙突が見えてきます。この施設こそ、長年の懸案事項であったごみ焼却場です。平成9年に、町民の皆様のご理解とご協力をいただき、全国的にも例が少ない地元誘致という型で環境センターとして完成を見ることが出来ました。

その隣には風が流れるようなイメージの変わった屋根が見えます。江戸川の春風のイメージを持つ「ふれあいセンターエコスポいずみ」は、環境センターの余熱を利用した温水プールの他にお風呂・サウナ・大広間を備えるとともに、広域利用を視野に入れた施設とすることで、平成9年7月の施設開設以来約60万人を超えるなど多くの方々から利用をいただいております。その結果、施設の年間維持管理費の約六割を使用料で賄っている公共の施設でもあります。

町長に就任後まもなく、今は亡き父から一本の純金の耳掻きを渡されました。その父曰く、「人の上に立つものは多くの人々の意見を聞き、何が正しいか広い視野で物事を判断しなければならない、日頃から耳を掃除し、人の話を聞き漏らすことのないように」と、渡された耳掻きでした。

以来、まちづくりを考える上で、常に現場主義を徹底し、地域に出向き住民の方と膝を交えて話し合うことにしております。現在まで一貫して「出前座談会」なるものを開催し、積極的に地域の方のご意見を伺っております。

話してみると、町が考えていることが適切に伝わっていなかった事が分かり、膝を交えたことでご理解いただくことの多いことに気付かされます。

私は、7年半の町議会議員を経験した後、平成3年に町民の方々の信頼をいただき町長に初当選し、現在3期目を迎えております。

今後も初心を忘れることなく、現場主義に徹した町政運営を進め、人と緑を生かしたまちづくりに全力を尽くしてまいります。