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 醍醐桜

印刷用ページを表示する 掲載日:2001年9月10日

岡山県落合町長 辻騏一郎

旭川と備中川の合流する、岡山県の北部に位置する落合町に「吉念寺」という集落があります。吉念寺集落のはずれ、海抜500メートルの見晴らしの良い高台に、「醍醐桜(だいござくら)」と呼ばれる樹齢1000年の桜の老樹が1株そびえております。

その昔、日本の歴史上まれにみる乱世の時代を生き抜き、波瀾万丈の生涯を終え、後世にその名を残した、後醍醐天皇のその波乱の生涯の中で、隠岐に流される途中(元弘2年)に立ち寄られ、その桜の素晴らしさを賞せられたといいます。その後、偉大な後醍醐天皇にちなんで、醍醐桜と誰いうこともなく命名されたといいます。

桜は日本の代表的な花ですが、醍醐桜はエドヒガンという種類に属し、昭和47年に県指定の天然記念物に指定されています。大阪国際花博を記念しての、新日本名木百選に選ばれており、樹齢1000年、直径7.4メートル、樹高18メートルの全国屈指の名木であります。

悠久の時の流れを刻み、苔むした老木は風雪に耐え、その偉大な生命力と周囲を圧する風格は何か神秘さすら感じさせ、気の遠くなるような歳月を生きてきたドラマを無言の中に私たちに語りかけてくれるようで、眺めているとその中に吸い込まれて行くような深い感動にかられます。

この醍醐桜も最近では、樹勢の衰えが目立ち、平成2年に有名な樹医である山野忠彦先生にお願いし、若返り治療を施してもらい、今では樹勢が回復し、すばらしい花びらをつけ全国から訪れる観光客の皆様の心を和ませ感動をあたえています。深山に堂々とした威容を誇る醍醐桜は町のシンボルであり、県のシンボルでもあります。

この醍醐桜を末永く保護育成し次代へ残す遺産として伝えようと地元の保存会と町とで環境整備を進めているところですが、その基金造成を目的にこのほど醍醐桜の歌を演歌界の大御所北島三郎さんに依頼し快諾を得て、大和路はるかさんの作詞で後世に遺る名曲が完成しました。この歌は、人生と桜の生涯を謡い上げた格調の高い名曲であります。

また、町では町の活性化に向け、道の駅「醍醐の里」を平成15年春、桜の咲く時期にオープンの予定であります。

私は人生訓として「ふるさとが人を育み、人がふるさとを創る」という信念で愛のある町づくりに取り組んでいます。

醍醐桜は過去から現在、そして未来へのロマンを秘め、大自然の営みの中でそこに住む人々と共に、美しく可憐な花びらを付けながら生き続けてくれることでしょう。