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テンぺで町おこし

印刷用ページを表示する 掲載日:2001年2月5日

テンペで町おこし

佐賀県白石町長 川崎修朗

あられふる
杵島が岳をさかしみと
草とりかねて妹が手をとる

杵島山の歌垣公園に建つ歌碑に刻まれている歌です。

古代日本に「歌垣」と呼ばれる、春秋2回、若い男女が酒や琴を携え、神の住む山に登り、歌を詠み交わして求愛や求婚を行う行事がありました。

「歌垣」が白石町の杵島山で行われていたことは、奈良時代の初めに肥前国の古い言い伝え等をまとめた「肥前国風土記」逸文に書かれていて、現在茨城県つくば市の筑波山と大阪府能勢町の歌垣山とともに日本三大歌垣と呼ばれています。

この「歌垣の里」白石町は、佐賀県の南西部に位置し、人口は約1万4千人、米と麦を中心にタマネギ、レンコン、イチゴなどを生産する農業の町です。特にタマネギは全国有数の産地として有名です。またここ数年、町立白石中学校、県立白石高校が駅伝の全国大会で上位入賞を果たし、「駅伝の町」としても知られるようになってきました。

普段は静かな歌垣の里を、昨年3月21日に放送された1本のテレビ番組が一躍全国的に注目を集める町にしました。その番組は「スーパー知恵MON」、紹介されたのは地元でとれる大豆を使った発酵食品「しろいしテンペ」です。最近話題の活性酸素を著しく減少させる抗酸化食品として紹介されたことが影響して、番組が始まると同時に役場中の電話は鳴りっぱなしとなり、職員はその対応に追われる状態がしばらく続きました。放送後1カ月で注文を受けたのは約1,300件、手作りのため製造が追いつかず、なかには数カ月待ちの人も出ました。この大反響を呼んだ「しろいしテンペ」とはどんな食べ物なのでしょうか。

日本では見たことも聞いたこともない人が多い「テンペ」とは、インドネシアでは400年~500年前から愛好された自然食品です。ゆでた大豆をバナナやハイビスカスの葉で包んでおくと、葉の表面に付着しているテンペ菌(リゾーブス菌)が大豆を発酵させ、1~2日でテンペが出来上がります。インドネシアでは、フレーク、クッキー、おかき等の食材として日常的に利用されています。

大豆を発酵させたと言えばすぐ納豆を思い起こされる方が多いと思いますが、納豆のように糸も引かず独特の匂いもありません。味は素直で鶏肉に似たうま味があり特別なくせはありません。このテンペの成分の中でも特に注目されているのが、人体で必要不可欠でありながら、体内ではほとんど合成されないと言われている必須アミノ酸の含有量です。

発酵過程でタンパク質が分解さ多いもので発酵前の15.3倍、少ないものでも1.2倍に増加するほか、血管をしなやかに保ち、心筋梗塞や動脈硬化の予防に役立つといわれるリノール酸も発酵過程で2,150倍、ビタミンB2は47倍、ビタミンB6は14.5倍に増加します。また、テンペ菌が発酵作用を促す際に、抗酸化性物質や抗菌性物質を生産するのも特徴です。

白石町では、減反の転作作物に大豆が生産されており、この地場産大豆を使った新たな試みとして、栄養価も非常に高く優れた食品である「テンペ」づくりに、「ふるさと産品普及の会」が中心となって平成元年から商品化に取り組んできました。そして平成6年に「しろいしテンペ」として販売を始め、平成9年7月には、テンペの本場であるインドネシア・バリ島で開催された「国際テンペ会議」に私をはじめ4名が参加しPRに努めてきましたが、今まで需要は伸び悩んでいました。

そんなときに巻き起こった今回の「テンペ」騒動ですが、一時的なブームに終わることがないよう、日常的な食品として普及し、これによる大豆の消費拡大と全国的に通用する白石ブランドの確立による町おこしにつながることに期待しています。