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 分権への真の対応と自治体としての生き残り作戦

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年9月25日

広島県新市町長 藤原平

中国地方の瀬戸内沿岸から少し内陸部に入り、隣に中核市となった福山市と内陸工業都市府中市との間に人口22,000強の人口を擁する我が新市町は、戦後備後絣の主産地から作業服を中心に男物カジュアル、スポーツウェア、婦人服、子供服を中心とする総合アパレル産業に脱皮して順調に生成発展してきたが、労働集約産業が故に、縫製工賃のコスト・ダウンを求めてその生産が国内の他の地域にシフトし、それが駄目になると国外にシフトし始まると産業基盤が急速に縮小化し始め、又、中国などでの生産が軌道に乗れば乗る程、安く上る中国産製品が国内生産の製品をもプッシュ・ダウンへと向う圧迫要因となり廃業倒産が続き未だに苦況から脱し切れていない状況であります。

町内産業の80%以上のアパレル産業がそういう状況であるだけに、我が町の町民税収も1987年(昭和62年)当時迄下降し、財政状況もどの比率を見ても危機的状況の中厳しい行政路線を直進中といった処であります。

こういう状況の下、地方分権化の作業が進み、我が町も権限移譲に伴う受け皿造りにそれなりに努力して参りましたが、介護保険等の実施に伴う人員増、コスト増にも機構改革を行う中その要員を捻出し、人件費等中心に経常経費の切り詰め、又建設投資も公債費を3~5億円下回る額に抑制するというギリギリの財政運用を行っている処であります。

こうした分権作業が具体的に進む中での対応をする際つくづく我が国の首長は国の施策に忠実なのかと感心する今日此頃であります。

地方分権化に伴う法制定、そしてその推進計画立案の中で委譲事務の項目だけは少しづつ明確になって行き、この4月からの分権推進一括法案は成立したが、その財源問題については漠然としたままである。最も国の方も地方とは比較にならない485兆円という国債残高を抱える状況では仲々財源委譲もままにならないとは思う。それだけに国もここから先は地方分権の受け皿造りとして合併を支援しているのだと思う。

国がこれだけの借金体質になり地方も同じような体質になった事は戦後の復興から立ち上り世界の先進国の優等生になる迄に発展したのは良かったが、高度成長期を過ぎても国、地方を挙げて無計画に事業を拡大してきた結果だけに我々地方の首長も同じように反省しなければならないのは勿論のことである。ただ、地方分権と合併というのは未だに国民の中には理解されていないだけに面倒な事である。

確かに我が国は地方分権国家への移行が遅れたのは確かである。これは中央集権国家体制が右肩上りの経済社会では1つの目標に向って国指導で一目散につき進んで時間的にも短期間で目標を達成し成功しただけに、先行した国際化、情報化する経済社会体制の変化に迅速に対応できなかった訳である。民間企業に於ける対応が早いだけに公的組織に於ける対応の遅れは社会の発展向上に大きな阻害要因になりかねない。

我々地方自治体もこのバックできない状況を把握し、分権社会の本質は「合併」にあると認識を持った上で、どうすれば地域社会として生き残り、発展を計るかについて根拠のある長期計画を持たねばなりません。そのためにも分権の受け皿としての行政組織のあり方、又、より効率的規模でまとめることでのメリット、そこから生み出される財源確保、こういったサイクルしか残された道はないと確信します。

21世紀のスタートはサステナブル社会の本格的幕開けでもあるし、私はこの信念を持って業務遂行をしてゆく覚悟であります。