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 社会正義を実現せよ

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年9月11日

埼玉県嵐山町長 関根昭二

我々は「安全で安心な社会」を求めている。毎日の新聞の社会面を見れば「殺人」と「強盗」の記事の無い日はない。これで「安全で安心な社会」と言えるであろうか。

栃木県では少年たちが1人の少年を脅迫して金を貢がせ、さらに熱湯を注いで全身火傷にして、ついには殺害して山中に捨てるという残虐非道な事件を起こしている。

九州では17歳の少年がバスジャックして、乗客の一婦人を刃物で刺し殺すという残忍なことをしている。

愛知県では一高校生が通りがかりの家に入り込み、その家の主婦を刃物で刺し殺している。

これら一連の事件はいずれも少年の仕業であり、然も何ら反省の色がない。バスジャックした少年は「殺人は正義である」と言い、高校生は「人を殺して見たかった」などと平然と述べている。大人でもしないようなことを少年がして然も悪を犯したという罪の意識がない。これら犯罪少年たちは名前も分からなければ住所も分からない。こんなことでいいのであろうか。

「殺人」という大罪を犯した人間を何故庇う必要があるのであろうか。罪を犯した人間を徹底的に糾弾することが「社会正義」ではないのか。社会を挙げて「悪者」を憎む雰囲気こそ「悪」をこの世から追放する最高の手段ではないのか。少年であろうと大人であろうと犯した罪に対して社会的制裁を課することは平等でなければならない。日本の法律は少年や精神病者に対してあまりにも甘やかし過ぎる。こんなことでは殺された人間の人権はどうなるのか。殺人を犯した人間の人権が守られて、殺された人間の人権が守られないのは、あまりにも非道ではないのか。

日本では20歳未満が少年であり、刑事罰の対象は16歳以上である。

イギリスでは、少年は18歳未満、刑事罰の対象は10歳以上の子供であるという。

フランスでは少年は13歳以上18歳未満であるが、刑事罰は10歳まで下がって適用されているという。

ドイツでは、少年は14歳から18歳未満で、刑事罰は14歳から適用されるという。

アメリカでは、少年は16歳未満で、刑事罰の対象は州によって異なるが7歳以上だという。(以上、桜井よし子著「日本の危機」による)

「少年」の年齢を14歳までに引き下げることは今や世界の大勢である。

「少年法」の改正は刻下の急務である。新聞によれば自民党など与党は現在の「16歳以上」からの少年の刑事罰対象年齢を「14歳以上」に引き下げることを内容とした少年法の改正案を議員立法で提出する予定だという。本法案の速やかなる決定を望んで止まない。

作家大岡昇平はその著「俘虜記」の「新しき俘虜と古き俘虜」の中で次のように述べている。

“人の心というものは変えられないものだ。宗教が道徳を社会的制裁から内心の制約に移してから2千年経つが、人心は一向に改良された形跡はない。この手段はもう試験ずみである。

これらの悪事の存在を許す社会的条件を変えるほかはないように思われる”

つまり悪事を働いた人間を教育によって変えようなどということは無理なことである。もしそれが出来るなら2千年も前から言われているのに、一向に改良されていない。

今や、そんなことを言っても何の価値もない。この腐敗堕落した日本の社会を変えるのはついには「革命」による社会体制の変革以外にはないのであろうか。