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 地域の特色を人づくり、町づくりに生かして

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年6月26日

千葉県町村会長 睦沢町長 河野功

西暦2000年の記念すべき年が明け、気がつけば平成12年度がスタートし、介護保険制度や地方分権関係の法制度が地方自治体の自主性や責任の上で、推進され、身近な住民の思いを身近な行政が担う取り組みが大きな役割として始められようとしています。

こうした地方の時代への趨勢は、人口8,600人の外房の一角に所在する小さな町においても無縁ではなく、むしろ生き残りをかけたような独自の方策やアイディアが求められ、日々緊張と発想の明快さを突きつけられているようです。

さて、昨年の暮れに「赤羽刀」と呼ばれる戦後、GHQによって接収された刀剣類が、文化庁により本町に譲与されることとなり、未研磨ながら歴史民俗資料館にて展示し、多くの方々にご覧をいただいております。この展覧会は、刀剣の美や伝統技術を見ていただく刀剣展というよりも、接収に応じた皆さんの心情や刀剣類の希有な変遷によって、戦後史の一端を考えていただこうとするものでした。

また、同じ昨年に『睦沢町民の戦争体験』が長年の聞き取り調査や手記によって刊行され、町内外から多くの反響をいただき、編集の発端を担った私も手記を持って、体験談を記載しています。戦争を体験し、戦後の復興を必死になり支えた世代も高齢になり、貴重な歴史の証人も多くの言葉として伝える術が難しくなってきました。接収刀剣展に見学にこられる方々の中には、戦後の苦労を懐かしく思いながら見ていらっしゃると聞きます。

現代社会の中では、このような戦後の復興の歴史をじょうずに伝えることができてきたのでしょうか。ともすれば、古いもの、昔の考えだから聞く耳を持たないと敬遠されてきたように思われます。現在の日本は世界の先進国と肩を並べ、経済、文化でも眼を見張る発展を遂げています。

つい50数年前の日本の状況をしっかりと記録し、戦後の私たちが築いてきたもの、犠牲にしてきたものを知る手がかりとなる大切なものです。

そして、今、合理的で大量に消費する経済活動で21世紀を豊かに暮らすことはなかなか難しいと気付きはじめ、知的資源といえる教育への取り組みの必要性を特に考えさせられます。

経済の復興を遂げた現代日本は、これからは日本人の持つ優れた能力を磨くことに力を入れて行くことでしょう。

各地の自治体で、地域の自然や環境、歴史や文化を活用した様々な特色ある活動がこの町村週報などでも報告されています。これらは地域振興の中での活性化を目的としていますが、新世紀に向けた「人づくり」がその根底にあります。半世紀では達成できない道のりかもしれません。

我が睦沢町においても、地域に根ざした文化や伝統、歴史や自然、そして環境が調和した活用を行政のすべての部署で意識しながら実践する気持ちをもう1度確かめたいと思います。

地域を生かした町づくりは、地方分権の最初のステップでもあり、地域に生きる住民の意見の反映でもあり、社会を通した教育の場と成りうるのです。そして、町長就任以来「ふれあいと対話で温かい町づくり」とした基本姿勢を遂行することができるものと確信します。

そして、本日も「町長と語る会」に町民の方がおいでになります。人と人を結ぶ「親接」を胸にお話をうかがいたいと思います。