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 若き日の思い出と私の村について

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年6月5日

大分県大田村長 河野俊一

私は、父の勤務先の都合で、今の韓国釜山で生まれました。幼い頃は、韓国の子供達と一緒によく遊んでいましたが、兄3人が中学在学中に亡くなったため、勉強よりも体を丈夫にすることが大事であり、農業の道へと進ませようという父の考えにより、田舎の祖父母の元に預けられ少年時代を過ごす事になりました。

時怡も昭和6年9月の満州事変に始まり、続いて昭和12年7月に支那事変と、正に軍国主義の波が押し寄せてまいりました。私達若人の血が燃える時代でもありました。私も父母に内緒で陸軍兵器学校を受験し、昭和15年に入校致しました。在学中、昭和16年12月には、忘れもしないあの大東亜戦争が勃発し、軍国主義で鍛えられた私達は興奮したものであります。

昭和17年に兵器学校を卒業し、内地勤務の後マライ半島に単身赴任し、上陸船艇を造る工場に勤務することになりました。工員は全員原住民で地元の実力者や多くの方々との交流が深まり運動会や結婚式にも招待を受け随分お世話になりました。

しかし、昭和20年8月終戦となるや一夜の内に工場にあったあらゆる物品が原住民に没収されてしまいました。占領政策に対する反感が一気に爆発したものと思います。敗戦により収容所に行く途中のことです、設営の為椰子の木を無断で伐ったという責任で、進駐している英軍に私は銃殺刑で一命を奪われる処でした。しかし、私のことを知っている現地の実力者のお力添えで助かることができました。異国人とはいえ心温まる友情に対し心から感涙したことを思い出します。

又、昭和21年6月に復員し、既に韓国から引き揚げていた父母や弟等と手を取り合って嬉し泣きしたことも昨日の事の様に思い出されます。

復員後、農業に取り組みましたが、経験がない為、地耕しすれば牛を怪我させる、又炭焼すれば木炭は取れず灰ばかり、すること全てが失敗の連続で随分苦しい時代を過ごしました。苦心の末、在学中に習得した技術を生かし建設業を開業致しました。この時の多くの方のご支援は今でも忘れる事は出来ません。

社会人として生活する以上、自分と接する人を大事にし、友情を持って社会の為にも誠実に努力せねばならないと決意したものです。

その後多くの支持者に支えられ、村議会議員・村長として30有余年努めさせて頂いております。

それでは、私の村(大田村)の現況を少しご紹介申し上げます。大田村は、国東半島の中心に位置し、風雨に耐えた石造文化財の多い純山村であります。近年道路網の整備により、隣接する四つの市や町まで、又大分空港まで20分位で行くことができ、日常の生活圏も広域化してまいりました。消防・衛生事業及び介護保険の認定等広域圏で運営されております。

村内では圃場整備も完了し、集落毎に営農集団も逐次結成され、近代的農業に変わりつつあります。又、安全な環境づくりを目指し、全村で集落排水事業にも取り組んでおります。

村の重要な課題については、決断の時期を失わないよう実行完成まで役場職員と村民が一体となって努力することが大切であると思います。

観光とレクリエーションの拠点として村の中央に横岳自然公園を開設しました。宿泊施設、ログハウス、スポーツ施設や子どもの喜ぶ鹿・兎・孔雀等の飼育施設も併設しております。

又、昨年から「横岳自然公園桜の会」を結成し、桜の里親を県内外から募集し、多くの方が子ども連れで参加し、公園内に植樹していただきました。本年の桜祭りも盛大に行われ、本村との絆を深めています。地域間の交流としては、私達「山の子」と大分県姫島村「海の子」との交流も毎年行っております。

村の白鬚田原神社では「どぶろく祭り」も盛大に行われており、毎年県内外からの多くの参拝者でにぎわっています。この「どぶろく祭り」は全国的にも大変珍しい行事で、この行事の行われている岐阜県白川村・島根県平田市・香川県豊中町と「どぶろくサミット」を毎年開催して交流を深めているところです。

この様に、各分野で県内外の多くの方々と交流し友情を深め合う事が村の振興につながると確信しております。

次に人材育成ですが、21世紀を担う子どもの人づくりが、明るい村づくりには不可欠であると考えます。

現在、世の中で大人も又子どもの世界でも不祥事が多発しております。子どもの時の家庭教育が1番大事であり、道徳心の高揚と郷土を愛する心を育てることが重要です。村政を預かる者として我々が生まれた時よりも世の中を少しでもよくする事、そして少しでも輝いて生命を全うしたい、その為の環境づくり人づくりに全力を注ぐ覚悟です。

人口2,000人余りの小さな村ですが是非1度遊びにお出掛け下さい。有形無形のお土産に出会えると思います。